昭和の風林史(昭和四七年九月二十七日掲載分)

来月になれば なんとかなろう

おしなべて業界人はあきらめも早い。相場する人の長所であり短所だ。まあ、なんとかなろう―。

「箒目の一と目の乱れこぼれ萩 無涯子」

生糸戦線や毛糸戦線に穀物市場から遠征していた軍隊はナポレオンのモスクワ攻略失敗の図のように馬の毛は長くのび、負傷者はよごれた包帯を巻いて、刀折れ旗を巻いて隊伍も乱れ、敗残の悲しき帰国ということになりそう。

毛糸も生糸も難しい相場になっている。隣の花が赤く見えて、赤い豆の小豆相場を見切って行ったものの世の中そう甘いものでない。

おしなべて、穀物筋の浮気グループは泣き面に蜂であったようだ。

そうだろうと思う。小豆相場で大儲けしたから勢いに乗って毛糸や生糸の相場に手を出したのではない。

小豆で、やられたから、よし取り戻してやれと他商品を思惑したまでである。

まさに飛蛾の火におもむくが如しである。

そうこうしているうちに穀物市場のほうも小豆の底入れ感が台頭してくる。この小豆相場、それほど捨てたものでもない。

どんな相場でも天井三日底百日。下げて、下げて、下げ続けたあとの閑散低迷横這いは自然の大底となり大底を打った相場は今度は上に行くしかない。

八千円割れの小豆相場、七千七、八百円は黙って拾っておけば必ずモノになるとの考え方が広まっている。

地合いについて、強いところを飛び付き買いをしては絶対だめだ。これからは、なにか嫌な材料が出て、それで売られたところを拾うこの方法しかない。

先に行って相場を刺激するであろうと思われる材料としては、やはり鎌入れ不足だ。そして産地が売ってくるかどうか。値段が気に入らなければ、契約を見合わせる。産地農家も経済力は、かなりついているから安売りしてこないだろうと観測している。

小豆はそういうぐあいであるが、手亡に関しては、いずれ小豆相場より高くなるのではないかという見方をする人が意外に多い。

小豆が駄目なら手亡があるさ―というわけだ。

阿波座の桜井さんも言っているように、そう先行きを悲観することもないかもしれない。

閑になればなったで、またなにかが飛び出してくるだろう。

●編集部注
 本当に〝来月になればなんとか〟なるのだから相場は面白くもあり、恐ろしくもあり。

 昔は鎧橋を挟み株式と商品の取引所があり、鎧橋を渡ればなんとかなった事もあったとか。勿論、どうにもならなかった方が多かったろうが。

【昭和四七年九月二六日小豆二月限大阪七八六〇円・一一〇円安/東京七八五〇円・一〇〇円安】