昭和の風林史(昭和四七年九月二十二日掲載分)

強弱垂れれば 結局そうなるか

カンカンになってみたいのである。しかし、そうなれないところもある手亡の相場だ。

「筑波見て上がらんと思ふ秋の情 碧梧桐」

手亡の相場を育てようという気持ちは誰にでもある。小豆は向こう半年は相場であって相場にならない。手亡にかける期待は大きい。

で、この手亡だが確かに東京市場の当限買い方はしっかりしている。恐らく受けて、その現物はモノを言う時がこよう。

新物が雨で品質の低下をきたしていると伝える。仮りにそれが事実なら、古品の値打ちは当然出てくる。

だが、期近高に刺激されて、期先が、どの程度まで買われるか?となると七千二、三百円精一杯か。

大正金時に比較しても手亡は割高である。小豆との比較観もあろう。

そういうことから、一本調子で高いという相場にはなるまいが、要は産地からの品物の出荷状況が、今年はどうなるか?に絞られる。昨年と違って小豆もそうだが、手亡も契約がちっとも進んでいない。

国鉄の貨車繰りも順法闘争で非常に悪い。これから秋作物の出回り期に入れば貨車輸送は窮屈になる。

産地との契約が遅れているのは先安人気で手当てが見合わされている事や、値段が気に入らないことも多分に影響している。

ここで注目されるのは売り建ての目立つ山梨商事の今後の出方だ。恐らく現物を引いてくるだろう。

手亡は決して不作ではない。五十三万俵という数字は作付け面積が減ったからにほかならない。

台風20号で、一割ぐらい減収になるのではないかと言われる。いや、全く被害は出ていないとも伝える。どちらの言い分が真相に近いのか今のところ判らない。

こう見てくると、現時点で判然としていることは①将来(来年)はこの手亡が必ず大相場になる②六千五百円以下の値段はあり得ない③しかし七千五百円以上をいま期待すべくもない④手亡は高値を追ってまで買うのは感心しない。押したところ、安いところを拾えばよい⑤七千円台乗せから売られよう。

取り組みの太る事を願う。強力な筋ものの介入を期待する。雨によって少なからぬ被害が出ておれば話は変わる。要は人気化するかしないかだ。

線型としては買いになっている。まあ、そういうふうな強弱を垂れてみた。

●編集部注
手亡相場中心の話で、カンカンとは是如何に。

昭和四七年七月六日に内閣総理大臣に就任した田中角栄は、この時、中国に渡って国交回復を巡り周恩来と会談している。

日中共同声明が発表されたのが同年九月二十九日。それから一カ月後の十月二十八日、日本に二頭のパンダがやって来る。

ランランとカンカンだ。

この文章を読む限り、この時点で既に、パンダ来日の話が報道されていたのだろう。日本で空前のパンダブームが起こるのはもう少し先である。

「客寄せパンダ」という言葉は八十年代生まれの筈なのだが、既にこの記事で同じような意味合いで使われていた事が判る。

余談だが、この時のブームの火付け役は黒柳徹子だと言われている。この時分に出版された彼女の監修によるパンダの写真集が、筆者の自宅にあった事を記憶している。

【昭和四七年九月二一日小豆二月限大阪七九二〇円・三〇円安/東京七九〇〇円・七〇円安】