君は連合赤軍 売り方は遠まき
赤い豆の買い連合は、まさに連合赤軍なみである。時々ライフル銃を発砲するのである。
「またもとの雛(ひひな)の店に立戻る 一帆」
連合赤軍みたいにその砦(とりで)を死守せよ―という場面だ。買い方は、一時の高値から千五百円水準を下げた現時点に背水の陣を敷き、状況の変化を待っている。
中国小豆の契約は、四千五百㌧ないし七千五百㌧という幅のある観測がなされているが、今後もなお売り物が出る模様だけに相場水準を上に持って行けば、値が荷を呼ぶことになる。
なあに、春の需要期にはいるさ。二月納会を受けて缶詰めにすれば、浮動玉も枯れるし。そのうち天候相場に、もつれこむし。
ところが、出来ないと見ていた北京商談がヤブから棒だし、春の交易会は手つかずの東北小豆が主役登場で〝山より大きい猪〟が飛び出すかもしれない。現物タンクの買い占めには日歩、倉敷料その他、目に見えない経費が嵩む。現受けした人なら、いかにそれらの経費が大きなものか知っているはずだ。
そのうち天候相場だ―などと言っておれないかもしれない。
なぜなら大幅増反の傾向があるからだ。しかも本年の天候は、悪くないようだという見方がぼつぼつ出てきた。
買い方は、まさに軽井沢の連合赤軍である。落ちることは判っている。勝利なき戦いであり、栄光なき買い占めである。
産地相場は四千円高をして、半値の二千丁を消した。そしてその姿は重い。連合赤軍が時々ライフル銃を発砲するみたいに陽線を立ててみるが、全国市場は、買い連合が完全に孤立していることを知っているから遠まきにしている。
だから商いは閑になる。近づこうとしない。こういうふうに、良識ある人々が誰も小豆相場を敬遠してくると、買い方は立ち枯れになってしまう。取引所も困るし、単品穀物の取引員も甚だ迷惑である。
砦にこもる買い方は必至であろうが、長すぎた意地商いは、ひいては全穀取業界を相手に戦う格好になるのだ。
そして、業界を敵にまわして戦ってきた者は、過去に、すべて断頭台上の露と消えた。
●編集部注
この時、あさま山荘事件が起きている。しかし巧い事を言うものだ。
赤い豆が赤軍派の話に絡み、最後はジャコバン派の話に準えている。
これらは共に、革命が持つ影の部分にあたる。
この文章から四十余年経過した現在、山本直樹が『RED』で連合赤軍の話を、坂本眞一が『イノサン』で断頭台で活躍した死刑執行人一家の話を連載している。
【昭和四七年二月二一日小豆七月限大阪一一〇円安/東京一一〇円安】