流れに沿って 戻り売りが定石
下放れて大きく突っ込めば、いかに悪い相場でも利食いなど自律戻しが入る。戻り売り方針。
中段のもちあいを下放れた。線(ケイ線)の姿は甚だよくない。〝仮住い〟の中段もちあいを何を錯覚したのか「閑散に売りなし」といった。
閑散に売りなしというのは長い沈滞を経たあとか、途方もない安値をつけたあとの極端な薄商いは往々転機となりやすいことを指したもの。
さらにつけ加えるなら、先のもちあいこそ商談再開でストップ安を含む暴落となったことから、高値因果玉に対する追証徴収―という解釈も成り立つ。それが一巡しての崩れ足は当然の帰結かもしれない。
この場合の下げに理屈はいらない。材料なしの崩れ・下放れをいぶかることもない。「高値で買い付けたから」などというのは結果を見ての講釈の類(たぐい)。
さて、戻り天井―中段もちあい―下放れから底打ちに向かう相場をどう判断し、どう対処するかのところ。おそらく、相場が落ち着きを取り戻せば、再び輸入採算がどうのと、値ごろ感が頭をもたげてこよう。
しかし〝雑音〟に耳をかすことはない。戻り一杯した冷厳たる事実をみつめ、日柄と取り組み内容がどう変化するかを見つめるのがよい。
それで下値だが、ひとまずメドになるのは一万四千円割れあたりか。場合によっては一月中旬の安値顔合わせも考えられないでもないが、それは先にいっての話で、それまでに情勢がどう変わるかわからない。
さしあたって一万四千円割れとなれば、大台三つ替わり(実質四つ替わり)で、いかに悪い相場であっても戻す地点とみられる。もとより、底を確認しての戻しというわけでないから反発、小戻しは再び売り向かうのが定石だろう。
注意しておきたいのはこの下げ過程で買い仕手が傍観―という事実だ。防戦買いを入れながら値を消す相場なら、売りっぱなしでよいが、ムリをしないで成り行きまかせというのはむしろ無気味だ。
巻き返しを恐れるというよりは、自然の流れに沿って逆らわず、安値で現物の消費を図る―という余裕がうかがえるからにほかならぬ。
当面の方針は一応「戻り売り」でよかろう。
●編集部注
相場の文章に携わる仕事に従事して有余年、上記の文章を〝格好いい文章〟というのだろう。
人は、相場格言を都合の良い具合に解釈する。
読者を惹きつつ、嫌味なく、状況を提示し、方向感を示すのは芸だ。
尤も、そこから逸脱するのも風林火山の味。ただ型があるから〝型破り〟という言葉が使える。
【昭和四七年二月二四日小豆七月限大阪三〇円高/東京一〇円高】