昭和の風林史(昭和四七年二月四日掲載分)

情勢変化待ち あるいは持久戦?

下放れるどころか高寄りした。むずかしく判断の迷うところだ。情勢変化をじっくり見守りたい。

甚だ気色の悪い相場である。二日の陰線などは新ポの陽線をすっぽりと包むもので、誰しも天井打ち―下放れが脳裏をかすめたに違いない。

だが案に相違しての高寄りである。仕手相場に〝ケイ線破り〟〝だまし線〟などつきものとはいえ、これも力をつけてきた買い方の威光というべきか。

取り組みをみると太平洋は買い突っ張ったままだ、山大の買い玉も変動なし。一方、山梨は急激な玉減らしである。

坂垣氏背景?の土井はこの日も盛んな買い戻しでついにドテンの形跡である。

売り方陣はどうか―。

輸入商社・三晶は沈黙の姿勢。わずかに新ポの七月限を新規に売ってきている程度だ。

同じく丸市、三忠の輸入組の建て玉もほとんど変わりない。

大阪市場では買い筆頭の脇田も高値で手じまい安くなると買い戻す―という風で、依然として強気の姿勢を崩していない。

和歌山の買戻しが目につく。乙部は期近売りの継続だ。

さて、判断のむずかしいところだ。今のところ買い仕手は逃げ腰のそぶりもない。といって、輸入商社の大量売りを狙って買い煽るほどの積極味もみられない。

しかも値段も一本調子の三千二百円幅の棒上げで、思惑の余地は充分だ。

五日の消費地需給発表、輸入ワクがどう決まるか、商談の見込みは。そして、このあたりで揺れ動くことによって一般の人気がどう変化するか。情勢は甚だ流動的である。

一万七千円抜けからの大相場を唱える強気にしても、大々的な踏みを誘い出すには支援材料の必要性を百も承知だろうし、売り方にしても音沙汰なしの中国の態度を見ては、一気に叩きつぶす―策にも出られまい。

あるいは持久戦にもつれ込む小豆相場かも知れない。

筆者など今さらこんな相場を買う気にもなれるかい―と思うものの、多分に感情論であることを承知している誰もがそう考えているようではまだ下がらぬ相場―とも思ったりする。

あまり迷いが深いときは、手を休めて見守るのが一番よい方法かもしれない。

●編集部注
 紙面での場電実況だ。

 ネットはおろか、電話線を引くだけで数万円取られていた時代に、この文章の価値は現代の我々が思う以上の価値がある。

 「罫線に淫するなかれ」という。〝ケイ線破り〟が登場するが、もっとえげつない〝ケイ線殺し〟もあったよとその道のいくさ者から聞いた事がある。

 まさにここがその場面であった事は、後々判る。

【昭和四七年二月三日小豆七月限大阪五〇円高/東京四〇円高】