昭和の風林史(昭和四七年五月九日掲載分)

逃げ場づくり 因果玉が鈴なり

目に見えて相場の内容が悪くなっているのだが大衆筋は値ごろで買い、さらに重くしている。

「山水に夏めく蕗の広葉かげ 蛇笏」

交易会での、その後の成り行きと、東穀における台湾小豆の大量クレーム申請、それに、きょうの全穀連会議で輸入小豆の格差を、もっと拡大しようとする動きなどが材料といえば言える。

一方、四月の消費地在庫三十四万八千俵。四月入荷予定の分が入船遅れになり、五月入荷。この数字も、ひねりかたによれば強弱の材料になる。

そして北海道の天候と作付け。

東京市場も、大阪市場も、総じて言えることは①大衆の値ごろ観による買い気が強い②クロウト筋は高値の買い玉を逃げたがっている③現物手持ち筋は不需要期と梅雨期を控えて、つなぎ場を求めている④値を吊り上げたり煽(あお)ったりして買い方は逃げ場づくりに懸命である。

とにかく供給の途切れるところがないのだから買い方に希望がない。昨年は市場の維持と解け合いを心配した。

今年は安値に低迷して相場が沈潜することを心配しなければならない。

変われば変わるものである。これで、交易会の追加成約だとか、案外七、八千㌧の契約になっていたとか、作付けが大幅に増反だったとか、なにかキッカケがあれば千円幅ぐらい棒で落としてしまう相場だ。

その時は、高値の因果玉を投げてこようから、七百枚買えるとか八百枚買えるという、ヤリ物ばかりの場になるだろう。

もとより全限万円割れで、特に期近限月など九千円割れという寒気(さむけ)のする場面もあるだろう。

そうでなくとも納会が接近すれば梅雨・不需要期を前にして受け手は極度に細くなる。先高期待があればこそ仮需要の受け手も出るのである。
コロンビア小豆も輸入する。春の交易会の契約分も入荷する。

買い方は、北海道の天候に期待をかけるわけだが、これは豊凶五分と五分。取り組み面では三晶が踏んでくるだろうという期待もあるようだが、中国に輸出余力がある以上、北京商談で買うことも出来よう。

相場の実勢は、全く悪いのである。さらにいえば、大衆の値ごろ観による買い気、これがこの相場をいよいよ重いものにしている。売り方針は不変である。

●編集部注
 陰の極み、陽の極みはもう少し先の話。両陣営ともまだ余裕がある。

【昭和四七年五月八日小豆十月限大阪三二〇円高/東京五八〇円高】