昭和の風林史(昭和四七年五月二十四日掲載分)

売り線のまま 取り組みが悪い

大衆は実によく買う。だからこの相場は仮りに霜一発で高騰しても、たいしたことはない。

「あやめ草あはれ野に咲く田植えかな 風生」

顧客筋は全般に〝買い下がり〟の姿勢である。霜一発という期待感が強い。従って取り組みは非常に重いものになっているから、仮りに降霜被害が伝わってもストップ三発するところを、一発半ぐらいのものにしかなるまい。

現在の小豆相場を買って勝負してみようという人は、六月15日の別れ霜までの天に祈りをかけた思惑である。そういう人が多ければ、多いほど、その場になって(降霜があって)利食いする人ばかりだろうから、競馬でいえば本命がはいった程度の配当しかない。

天候が申し分なく発芽も順調であったら一体どうなるか。

輸入小豆の俵(たわら)の重味で沈んでしまう。沈む場合、底が浅いか深いかであるが、霜一発期待の乗客が多いほど取り組み要因も悪くなるから、九千五百円あたりに鎮座してしまうかもしれない。

気象専門家の、ひかえめな、個人的発言を聞いていると、今年の北海道は四十三年型で、小豆の作柄は平年作以上と見ている。道農務部の15日現在調査によれば、今年は融雪が早かったことと四月以降の天候に恵まれ農作業は平年並みから、やや進んでいる。たとえば牧草は平年並み~七日程度進む。水稲は二、三日早い。てん菜は四日ほど早く、馬鈴しょは平年並み。豆類やや進む。

札幌管区気象台の三カ月予報も昨年ほど以上な天候にはならない。六月はほぼ順調―とある。

もとより、天候、作況についてはすべて予測になるわけで、予測を土台に思惑がからむわけだが、予想でなく現実の厳然たる現象が、在庫量と、入船による供給の途切れが今後ともあり得ないということである。

それで、四月25日の安値を、この相場は切るだろうか?という見方であるが、天候思惑で買われながらも、安い場面が続き、売り方は利食いしては、反発を警戒、戻せば売ってくるだろうから内部要因は下降型。結局は天候さえ今の調子でいけば四月25日の安値など問題なく割り込んでしまう。

霜一発で、わっときたところは、絶好の売り場で、そのことさえしっかり頭に刻み込んでおけば、なんら怖くないのである。

●編集部註
 読みは正しかった。実際〝わっと〟する場面がもう少しすると登場する。

 問題なのは、この〝わっと〟する場面に、売り方が耐えられるか否かだ。

 往々にして、こおいう時の〝わっと〟は強烈だ。

【昭和四七年五月二十三日小豆十月限大阪一万〇七二〇円・七〇円安/東京一万〇六四〇円・一〇円安】