昭和の風林史(昭和四七年五月八日掲載分)

増反、順気なら 雨のダラダラ坂

天候相場必ずしも高いとは限らない。順気順気で雨のオランダ屋敷はダラダラ坂という事もある。

「どくだみの香にたつ土の薄暑かな 麦南」

やっと気の乗らなかった二週間が終わった。五月第二週、さあこれからである。仕事も、相場も。充分の英気を養っているから薫風に乗って本格化してこよう。

まずきょうは夕刻ホテル阪神で全繊協連の前夜祭。全国繊取首脳陣及び協会役員理事、取引員経営者が集まり明九日の大ゴルフ大会の前祝の祝盃をあげる。明日は、だから鳴尾猪名川コースに繊取関係者がほとんど顔を出す。

穀物のほうは全穀連が輸入小豆の格付けの問題で会議する。

10日は東京パレスホテルで東京砂糖取引所の開所満20周年式典と祝賀パーティー。15日沖縄復帰式典―。小豆の買い方強気はお赤飯をたいて復帰を祝う。

そうこうしているうちに広州での春の交易会も終了する。取引員の店頭に北海道の天候と気温が表示される。

いよいよ産地は播種を控えて一種の緊迫した空気が流れる。

そして、こちらのほうは14日が京都嵯峨の三船祭。15日葵祭。17・18日は神田深川三社祭。

なにかと気も張り、暑さも加わる。

それで相場のほうだが一万円と一万一千円のあいだの千円幅を三百、三百、三百と三ツに区分して下段、中段、上段の構え。一万四、五、六百円どころで売り込んで、八百、九百、千円あたりを買いついて、いうならミニミニ相場。

あの一月12日からの雄大な四千丁高とか、春の彼岸の失神相場などに比べたら洗面器の中のさざ波である。売っても、買っても損は軽い。

去年の今時分はどうであったかと言うと一万二千円相場をようやく脱出、五月19日一万五千五百円と四千円幅を棒に立て、あと六月中は五千円中心相場。

そして七月10日起点に\\凄絶七千丁高二万一千円に爆走するのである。

しかし当時と現在とでは在庫事情が、まったく違うし、インターナショナル・レッド・ビーンズとなりつつある昨今、産地天候で買われる場合は絶好の売り場と狙われることであろう。

増反、順気、豊作型―という売られてばかりの天候相場ということも考えておかなければならない。

●編集部注

時代を感じる。この文章が掲載されている時、日本は46都道府県だった。

沖縄で赤飯を炊いて祝う風習があるのかは疑問だが、実際相場は上がっている。実にマメ屋らしい微笑ましいロジックだ。

【昭和四七年五月五日小豆十月限大阪一万〇九二〇円・一六〇円高/東京一万〇八六〇円・一〇〇円高】