昭和の風林史(昭和四七年五月二十二日掲載分)

早や千円下げ 実勢悪を反映す

理くつ通りに動けば動いたで面白味に欠ける。天候の変化は薬味みたいなものであるが―。

「苦潮のひたちた寄する破船かな 一草人」

北海道の小豆作付け面積は結局のところ五万八千ヘクタールに落ち着くようだ。早いところは、もう発芽していると伝えるし、これから種を播くところもあるので、作付けが、もう少し増加するかもしれないと言う。

相場のほうは、知らぬ間に、かなり下げたという感じである。

七月限(大阪)など戻り頭から、きっちり千円下げをしている。

こうなってくると先三本の一万一千五百円以上を〝その時の地合い〟につられて買った、大衆筋の玉が苦しくなる。

決して品不足の市場ではないのだから、天候さえ順調なら、軟化はまぬがれない。そして、今月末在庫も中国小豆の入船があり先月末数字を大きく割ることはなさそうだ。

消化した分だけは毎月輸入されるという、今の小豆の需給関係は、確かに流通の革命である。

だから、小豆に関しては端境期がない。しかもコロンビアなどからの輸入期も控えて、仮りに天候相場で人気が沸いたところで、それは一時的な〝狂い咲き〟に終わり、短命である。

思えば、結局輸入商社と輸入国と取引所に奉公するだけである。

売り方の七割強が実弾背景のヘッジ玉。こういう取り組みでは、値ザヤだけを狙うスペキュレーターは泳ぎにくい。第一、仮需要というものに花が咲かない。市場が熱狂して相場が沸くと、すかさず採算表をにらみながら輸入商がヘッジしてくる。

取引所相場とは、本来そうあるべきものかもしれないが、そうなると、やはり物足りないのである。

ともかく先に行けば行くだけ品物が軽くなるという楽しみがない。

そういう需給事情で、天候の変化を〝薬味〟にして刺激をあたえ、絵にしていこうというのだから大変しんどいのである。

週末の線型は、そのしんどい相場を判然と表示していた。よく言う悪い線である。重い姿。下げ暗示。崩れ型。

そして納会も近づく。

六月は梅雨の不需要期で品物は売れないが、入船は続く。七、八月が輸入最盛期。九月は府県産小豆の出回り、十月は輸入小豆の捨て場、十一月は新穀出回り期、秋の交易会―。

考えてみれば面白いことのない小豆相場である。

●編集部注
 ここに来て、買い方は一万円の岩盤を夢想する。

 一方売り方は、その岩盤の脆さを夢想する。

【昭和四七年五月二十日小豆十月限大阪一万一〇四〇円・一七〇円安/一万〇九九〇円・一九〇円安】