戻り一杯せり 線型も暴落型に
戻りの限界が見えたような相場つきだ。このあたりからの売りは千円割れを見て案外判りやすい。
「はじき豆出初めの渋さ懐かしき 月斗」
千日デパート・ビルの火災をテレビ、新聞で見て慄然とする。よく夜の銀座に案内されて、次々と回る先々はたいがいエレベーターで四階、五階か、地下一、二階である。かなり酔いも深くなっているから、さあ火事だーと騒ぎになったら惨事はまぬがれない。よく行くあの店、この店、先日行った店の事など思い浮かべていたら寒(さむ)気がしてきた。〝高いところ〟では飲まないほうがよいという意味は、値段と所在場所の二重の意味が含まれる。
相場のほうは交易会で八千㌧出来たと伝える情報や、結局六千㌧で中国側は売り物なしになったという情報などで、上げたり下げたり。
ようやく交易会も終わって産地は播種期にはいり、次の北京商談のことよりも北海道の天候に関心が集まる。
山梨商事の霜村昭平社長は『(前場)二節が終わって(15日)三晶さんからもう五百㌧買わないか?といってきた。定期が一万一千六百円で私のところはベタベタだ(ヘッジして)。
結局今度の交易会でマバラが千五百㌧。前の分が四千二百㌧。三晶が香港経由六百㌧を含めて三千㌧。合計八千六、七百㌧が実数である。しかし、このほかに千四、五百㌧が出来ているはずで、私は一万㌧の契約が出来ていると見ている。八月にはコロンビア産も入荷するし、供給面になんの不安もなくなった』。
北海道の古老は、辛夷(こぶし)の花の咲く年は豊作だという。今年は辛夷がよく咲いたそうだ。この花は青白い大形の香りの強いもので、ほころびると赤児の拳(こぶし)を連想させる。
ともあれ、相場のほうは〝強気は強気〟、〝弱気は弱気〟明らかに区分するとそれぞれ信念を一貫する。
売り方は、あくまでも売り上がり方針。来月にかけて品物の売れないシーズンだ。それと、高値にきて天候思惑の買いつきも目立っている。仮りに八千㌧以上、一万㌧の契約が出来ているとしたら、この相場再び暴落は必至である。それを天候の思惑でどこまで買い支えることが出来るかである。
見ていると二千円どころは、やはり抵抗が強い。すでに線型は暴落型を示している。一万一千円を割ってくるようなら様(さま)変わりの場面となるだろう。
●編集部注
死者118名。ビル火災の歴史で必ず出てくるこの事件。跡地は現在ビックカメラになっている。
【昭和四七年五月十五日小豆十月限大阪一万一三九〇円・二一〇円安/東京一万一三六〇円・一七〇円安】