昭和の風林史(昭和四七年八月十七日掲載分)

遂に底入れる かなりの反発が

おどま盆ぎり盆ぎり盆から先ゃ高いぞ盆が早く済みゃ早よ戻る。小豆も手亡も底入れしたようだ。

「鬼灯が朱く八月余日なし 誓子」

なんにも言うことはない―と、テレビの前で高松一高と広陵の試合を眺めているのも、ものの哀れを感じるのである。思えば昨年は野球どころではなかった。今はしょうがないわい―と、買い玉持つほとんどの人たちは、投げやりの気持ちで、ここで強気など言える根拠もないし、言ったところで笑われる。

いや、よろしい笑わば笑え。漫才をやってやろう。台風14号が北海道を襲って、かなりの被害を出してさ、そのあと低温でね、落葉病が、はっきり出てきて、どうだいそのあと、ひどい霜が降りたんだってよ―。

馬鹿たれ、台風14号はまだ台湾のほうにおるんだぜ。寝ごとは寝て言え。伏兵・落葉病はどうだ?。あかん。あきません。そのきざしが出たら相場はこんなところにいますかいな。千丁上げの九千八百円さ。

阿呆らしいという顔である。『言うべき言葉なし』。煙草ふかしてテレビの前で野球見ている人はいいけれど、当方は、書く事なしと、紙面を放置するわけにもいかない。

しかし、長年の相場記者の勘で、こういうところにくると相場は本当に底がはいるものだ―という事を知っているから、売り方の言っていた目標値の八千五百円も実現したことだし先三本の九千円台回復は、早いのではないかと思った。

手亡にしても六千八、九百円が頑強すぎた。これで、気分的にも買い方が力のつくような動きを、きょう、あすと、ここ両三日続ければ手亡のほうから先に市場は活気をとり戻すことであろう。

盆が過ぎれば、秋の風。それは需要期入りである。末端の庭は、からっぽである。小豆の相場を見ていて、もうちょい待てで、手当てをしていない。これが相場の締まるにつれて、買い急ぐわけである。

その場合、中国小豆の六千円などという値段はいかにも安い。

案外この小豆相場は前三本から転換して出直りのキッカケを作るのではないか。

おどま盆ぎり盆ぎり盆から先ゃおらんど、盆が早よ来りゃ、早よ戻る。あすは山こえどこまで行こか。鳴くは裏山蝉ばかり。おどんが打死だば道端ゃいけろ通る人ごち花あぎゅう―。

●編集部注
 間もなく底入れする。 確信はある。しかし、それが何時か判らない。

 せめて何か指標となる物はないか…。そうだ、天体の動きはどうだろう。

 メリマン氏が金融アストロロジーの研究を始めるのは、この記事から7年5カ月先の話である。

【昭和四七年八月十六日小豆一月限大阪八六四〇円・一〇円高/東京八六八〇円・七〇円高】