昭和の風林史(昭和四七年八月十二日掲載分)

手亡に動き足 気乗りせぬ小豆

売るべし、買うべし、休むべし。そのいずれにもならない小豆相場。むしろ手亡に望みが託せる。

穀物相場が腑抜けのような無気力場面で閑散となっているのに対して、生糸、毛糸、乾繭、砂糖などの市場は活気に満ちている。

小豆相場のマニアであっても、いまの段階では全く手が出ない。

弱気筋から見れば、まだ売り余地充分といえるだろうが、実際に収穫が終わったわけではないし、いつどんな落とし穴(早霜、落葉病など)がないともいえないだけに売りにくいところだ。

といって、理屈で考えれば買い方を刺激する材料は全くない。

受け渡し用?のクズ豆は大量にある。外貨のワクもタップリ。消費は一向に伸びていない。因果玉の整理も進んでいないままだ。相場の制空権を握った売り方はちょっとでも戻そうとすると、すかさず正確無比なスマート爆弾を浴びせてくる。

この際、動くと売り方のエジキになることは必死だ。

売り買いとも完全に手詰まり状態の穀物相場がさびれて、他の相場が賑わうようになるのもやむをえないところだろう。

ここまでくれば夜道に日は暮れぬ。のんびりいこうという気はあっても世の中そうもゆかない。

第一、そうなって困るのは穀物単品の業者だ。ひところからみれば経営規模も大きくなっている。去年は二~三台だった車も十台にもなっているところもある。

人も遊ばしておくわけにはゆかない。のんびりとしておれないのは客も業者も同様である。

そこで、まだ六限月制となって日も浅く比較的新鮮さを残している手亡あたりを、も一度手掛けてくるようにも思われる。

小豆が豊作なら当然手亡も豊作のはず。減反といっても小豆と違って競合品の多いものであるから、小豆が下がって手亡が上がるというのもおかしな話であるが、一部有力筋の移行次第で相場の色づけぐらい朝飯前である。

すでに手亡はこの二日間で安値から三百円がらみの反発であるし、東京市場では手亡の出来高の急増が目につく。

動けばみんながまたついてくるだろうが、小豆は当面動きそうにないだけに近寄っても張り合いがない。

売っても買っても、また休んでいても妙味がない。

 ●編集部注
 マメ屋を殺すのに刃物など要らぬ。凪のような相場が続くだけで良い。

 これは昔も今も同じ。パラジウムは強いものの、現在の金、銀、白金相場は夏バテ気味のようだ。

 営業の中心を金に置いている取引員の皆様のご心中、いかばかりかと。

【昭和四七年八月十一日小豆1月限大阪八八九〇円・三〇円安/東京八九〇〇円・三〇円安】