昭和の風林史(昭和四七年六月一日掲載分)

強気になれん 急所急所を売る

霜情報で市場によってはS高をしたが、筆者は強気になれない。人はどうあれ噴き値狙い撃ち。

「六月や峯に雲置く嵐山 芭蕉」

帯広測候所が30日、週間予報で二日と三日と五、六日に気圧の谷が通るため、この期間は気温の変化がはげしく、短い周期で天気はくずれる見込み。気温は二日と四日、五日が平年並みのほかは、やや低く、晴れた夜には霜の降りる恐れがある―と発表したことから、月末の小豆相場は夜放れ高をした。

小豆に対する市場人気は急速に強くなっている。一万一千四、五百円から一万二千円近辺を予想しているようだ。

新ポ生まれる新穀11月限に対しての期待も強い。

中国小豆の供用格差が虐待され、評判の悪い台湾小豆の供用が打ち切られるため、大幅な上ザヤ発会を予想し、ひいては11月限高が他限月を刺激するだろうという見方である。

ケイ線は、これで一万一千五百円に突っかけてくれば安値での〝三川〟型。
〝三山、三川〟相場の極意。三月23日の安値、四月25日の安値、そして五月25日の安値。大底構成と見るのは人情である。

期近の一万円割れは買えば間違いないという実績が証明されている。

九、十月限の一万円そこそこは、やはり買い場だ。あれだけ悪い材料が言われ総悲観気分であった納会が、アッという高納会。これだから相場は、やめられん。

おりしも発芽時期の霜情報。相場は高いと買いたいのが人情である。買って、先の高値一万一千八百円。この急所を抜いて二千円に迫れば踏みも出てこようが、交易会成約分の入船、北京商談、不需要期という圧迫要因は依然解消されていない。

問題は、帯広測候所の予想の通り気温が下がり、晴れて、霜が降りるかどうかで、霜がなければ買われた分だけ急落は必至であろう。

方針は、売りなら売りで一貫することである。すでに相場は〝天〟にある。発芽期の難所を無事通り抜けることが出来るかどうか。霜予報でストップ高をするぐらいだから、実際に降霜があれば全限S高の可能性もあろうが、水準が高いところでの霜一発と安値でのそれとでは反応の仕方もおのずから違うだろう。

噴いたところは売りで勝負。一万一千六百円以上は輸入品のヘッジ圏内であり、また、高値には因果玉が随分と残っている。人はどうあれ筆者は強気になれない。

●編集部注

〝人はどうあれ筆者は強気になれない〟という、このフレーズに相場の全てが集約されている。

【昭和四七年五月三十一日小豆十月限大阪一万一三四〇円・六四〇円高/東京一万一四〇〇円・六〇〇円高】