昭和の風林史(昭和四七年十一月三十日掲載分)

目先小浮動も 結局下値指向型

インフレ買いが商品取り引きにも見られるようだ。大衆買いで戻したところは売っておけばよい。

「うつろへど一間明るし残る菊 緑水」

あすで霜月・十一月も終わる。そして十二月・師走がやってくる。毎年のことながら、いよいよ年の暮れという慌しさを覚える。

このところ株式市場はとめどもなく高い。東証旧ダウの四千七百円台を三日で突っ張って、二十八日には早くも四千八百円台に乗せるという早わざ。ここまでくると年内五千円も手の内にあると思える。

株式がこうも高くなった背景には、これまで外人買いや法人買いがあったが、ここへきてインフレムード買いが際立ってきた。

こう何もかもが高くなってきた以上、株でも買っておかねば―という心理である。インフレがまだまだ進むから大勢的には株価も引き続き高くなるとみてよいようだ。

さて小豆だが、納会の受け腰の弱さからみて、もう一段の下値があるとの意見が多かったところ、手亡の堅調に支援されて戻り歩調である。そのほかの商品もおしなべて堅調だ。

これは、さきに述べた株高の原因であるインフレムードによる大衆買いが商品取り引き相場にもかなり影響していると思われる。

先日、小豆が一万円をつけた時、十年前の大豊作の時に一俵五千円の相場であれば今なら大豊作だといっても一万円以下では安すぎるという説も聞かれた。

物価高が身につまされている大衆の耳には、真にもっともらしく聞こえる話だ。

株はずいぶん高くなってしまった。それなら商品はどうですか、というようにセールスが勧誘すればこれは効果があがることだろう。

問題は株式の場合、折り目のつかない真新しい株券であっても、ヨレヨレの手アカのしみた株券であっても値段に変わりはないが商品はそうはゆかない。格差があり供用期限がある。

そのほかに株式は配当がつき、折りたたんでタンスの引き出しにも入れておけるが、商品の場合は持つためには倉敷料がいり、受け渡し手数料も必要である。

商品によってインフレ・ヘッジを考える時、こういう比較も必要だ。

とにかく師走。株式も商品も恒例の餅つき相場が始まる。
餅つきのキネの上がったところは売っておきたい小豆である。

●編集部註
 大衆は現受けしない。
 実に勿体無いと思う。
 この当時は貴金属取引がなかったが、今なら結構使える手段だと思う。
 貴金属なら腐らない。手元に来るのは倉荷証券。充当も出来る。

【昭和四七年十一月二九日小豆四月限大阪九六九〇円・三〇円高/東京九七八〇円・一一〇円高】