昭和の風林史(昭和四七年十一月二十二日掲載分)

総強気も結構 それで目先天井

手亡にまで火がついた。満目総強気である。しかし、有りがすればいずれ、あり余りになること必至。

「神農の祭の虎をもらひけり 一杉」

明十一月二十三日は勤労感謝の日、昔流にいえば新嘗祭(にいなめ祭)である。そして我が社からほど遠からぬ薬屋の町、大阪は道修町の神農さんのお祭りの日だ。

神農は中国の古い伝説の中の三皇五帝の中の一人である炎帝で、人身牛首天下に農を教え、百草を嘗(な)めて医薬を創製したといわれる。
文政五年(一八二二年)日本ではじめて虎列刺(コレラ)が流行したとき、道修町の薬屋がよって「虎頭殺鬼雄黄丹」という虎の頭の骨を配合した丸薬を作って患者に施したところ効めが顕著であった。

昔は疫病除けとしてこの丸薬と張り子の虎を五枚笹につけ参詣人に授与したが、今では張り子の虎だけが笹につけられ魔除けとして神社や出店で売られている。

このところ、神農さんの祭りも年々賑やかで、二十二日の宵祭りの夕方は近所の人や会社帰りの人々で混雑し、日ごろ澄ました顔の銀行の女子行員もタコ焼やおでんを頬ばりながら歩く。今に残る船場の祭りだ。

神農さんの祭りが終わると、気がついてみれば年内あと四十日もない。とくに相場の方では大納会まで正味一カ月ほど。大なり小なり玉を建てていれば上がっても下がってもうしろからせき立てられているような思いがする。

さて小豆が一カ月前、いや一週間前にほとんどが予想しなかった全限一万円台乗せを示現したあと今度は手亡が出番とばかり先限が八千円台に難なく乗せた。

そして小豆は一万円地相場説が通用するようになって、このところ市場人気は完全に強気に変わった。

売り方のめぼしいところは総退却し、僅かに買いからドテン売りに回った西田の派手な動きが見られるだけ。ここへきて次は年内一万千~五百円目標との声も聞かれる。

大衆が強気にならねば相場はなかなか天井を打たないことは株でも商品でもかわりはない。

その意味において、売り方がイレたあと、さらに押し目買いから買い乗せというような人気になってきた昨今、いよいよ目先天井も近いと判断できる。

高値が予想外であっただけに反落も急。また値幅も深いだろう。

●編集部注
頑固、頑迷は、相場の敵であるといってよい。

反面、相場を張るのに信念は必要といえる。

意地と信念を秤にかけりゃ、意地が重たい相場の世界。背中で泣いてる唐獅子牡丹。

高倉健と鏑木繁。実は一歳違いだ。合掌。

【昭和四七年十一月二一日小豆四月限大阪一万〇一〇〇円・八〇円高/東京一万〇一一〇円・一三〇円高】