昭和の風林史(昭和四七年十一月二日掲載分)

売り上がって 下がるのを待つ

新ポとなると、多少ともご祝儀商いがでる。中国大豆もS高。気分的に買われたところは売りだ。

十一月ともなると、まさに秋色たけなわというところである。だが日の暮れるのも随分早くなってきた。

大阪では日没が五時ぐらい。東京ではそれより二十分くらい早い。一カ月の間に約四十分ほど早くなった。まさに秋の日はツルベ落としである。

デパートではクリスマスカードを並べているし、六日には年賀葉書が売り出される。日が短くなるとともに何か後からせきたてられているような気になる。

明三日は文化の日。毎年のことながらいまごろは菊の花が一番の見ごろ。

「秋の空すみ菊の香高き」候だ。三日、五日の飛び休とあって、人出も多いだろう。

人出をいとう向きは陽あたりの縁側で菊見酒もまた一興。

秋菊に佳色あり、露に憂ひてその英(はな)をとる。

一觴独り進むと雖も、杯尽くれば壷自ら傾く。

日入りて群動やみ、帰鳥林にはしりて鳴く。

東軒の下に嘯傲して、いささかまた此の生を得たり―こんな境地もまたあってよさそうだ。

さて、新ポは小じっかりである。あれほどの大豊作、そして予想以上の中共小豆の成約があったのに先限八千五百円ははなはだ堅い。売っているとしりがこそばくなるような気持だ。そして相場がこうも堅いとマバラ売り方の買い物が散見され一層強くみえてくる。

しかし相場が強張っている原因は産地の売り渋りからである。品物が少なくて強張っているのではない。農家が現在の値段に不満であるのは、去年の高値覚えが残っているからだ。去年の今頃は中間物で二万円もしたものが、ただの八千円となっては阿呆らしくて売る気にもならないのは当然だが、それだけ品物が産地に残って悪材料をあとに残すだけだ。

北海道で小豆を作っている農民は相場に精通しているといわれる。だから安いからといってヤミクモに売ってはこない。来年の減反や天候に売り時のチャンスを狙うぐらいの気持は持っているだろう。

だが、いずれは売らねばならない。

選挙でも済めば農産物の自由化実施ということもありうるかもしれない。

新ポのご祝儀気分で上げたところはまたとない売り場だ。

●編集部注
 ご祝儀相場というが、何へのご祝儀なのか。
 この当時の事はわかからない。しかし十数年前のご祝儀相場、特に新規上場のご祝儀相場は売りであったように思える。
 あの時一般投資家に祝儀袋が回っていれば…。

【昭和四七年十一月一日小豆四月限大阪八九八〇円/東京八九五〇円】