昭和の風林史(昭和四七年十二月六日掲載分)

人気気まぐれ 流行厭きやすし

本当は今のうちに安くして、消費をすすめてこそ来春からの高値が期待できるのである。

「うとうとと生死の外や日向ぼこ 鬼城」

十一月限小豆の納会が東京、名古屋九千三百円。大阪九千三百五十円という、この値段がどうにもひっかかる。

納会値段は実勢である。

いま、強気筋が盛んに言っているような、品ガスレとか、産地の出荷難だとか、そういう少なくとも相場の大勢が上昇気流に乗っているものなら、九千三百円という値段ではなく、もっと上の値段で納会したのではなかろうか。

サヤ関係も一時順ザヤから逆ザヤ現象となった。その時がこの相場の最も熱したところで、今は再び順ザヤだ。相場金言に『逆ザヤに売りなし』という名言がある。名古屋の大石吉六氏は順ザヤの相場が好きでなにによらず相場が逆ザヤの間は一貫して強気していく。毛糸でも、小豆でもそれで大石吉六氏は大勝利した。

今の小豆相場は、一時的に逆ザヤ現象を見せたが、すでに解消している。

ムード買い。この事を考えてみよう。これは正体を見つければ怖くない。流行とかムードというのもは永続性のあるものではない。いかにも気まぐれで、厭きやすい。他の商品から小豆に人気が移る。それは確かいに言える事だが、その事で相場の大勢基調が先行き供給過剰だという現実を覆えすことは出来ない。

ムードで買うだけ買ったあとは、因果玉のシコリが残るだけである。

すでに12、1、2の三限月の一万円以上には、人気で飛びついた因果玉が、まるで電線にひっかかった凧(たこ)のように無残である。

筆者は、相場は甘くないと思っている。

豊作相場らしい相場がこの小豆には出ていない。

七千八百円。あれが豊作相場だ。一万二千円から下げた、あれが豊作相場だ―と言うかもしれないが豊作相場とは、そういうものではない。

今は、人々は皆すべて来春は減反、天候相場、大衆パワーだと一万二、三千円を期待しているけれど、仮りに巨大な仕手が介入したりとしても中国からの輸入量は増大しようし台湾からも入荷する。

小豆は九千円ぐらいが適当な値段ではなかろうか。上ばかり見ているうちに年暮れぬ。年暮れて高値のあずき残りけり。誰も彼(か)も高いものだと思いけり。

●編集部注
 やっと下げが来た。

 罫線的には九五〇〇円が岩盤と、買い方は思いたい場面。売り方は、この岩盤は脆いと思う場面。

 あさま山荘の如き、師走の攻防戦が始まる。

【昭和四七年十二月五日小豆五月限大阪九八七〇円・一六〇円安/東京九九四〇円・一七〇円安】