昭和の風林史(昭和四七年十二月十三日掲載分)

十六日までは 玉の出具合で

十六日の農林省の収穫予想数字発表までは硬派も軟派も積極的な行動に出にくいところだ。

「苔にして萬両の朱の四粒沁む 三樹彦」

昭和四十八年神宮館運勢暦(高島易断所本部編)によると48年の財界、証券界の気運は「日西山に傾くの象」「鳥を見て矢を失うの意」と出ている。タイミングの悪い苦境だそうで、証券界に一大波乱が生じ凶悪にして衰退的、深刻な混乱をもたらすでしょうと、甚だ気になる卦が出ている。

大手証券会社の店頭で、カウンター越しに営業マンがお客と、やりとりしている。『上がるとか、下がるとか考えて株を買うのだったらお止めなさい。株価が上がるか、下がるかなど眼中にないのです。要はあなたは株が欲しいのですか、欲しくないのですか』。気絶するような言い方である。

天下のなんとか証券ともなると、たいした自信である。

年内ダウ五千円乗せが証券界では常識である。

円切り上げで株価が暴落したところを買うため資金を準備しているのだ―という大手商社も多いそうだ。

高島易断が「証券市場は日西山に傾くの象」などと言っても、今は誰も気にしないだろう。

相場というものは、下がってから、あわてるようになっている。

小豆相場はどうか。こちらのほうは、下げてもあわてない。高くなってもあわてない。

当面、一万五百円が上値。八千五百円が下値。

二千円の圏内での動き。その中心から安ければ買いさがっていく。中心より高くなれば売り上がっていく。

16日の農林省の収穫予想数字発表までは硬派も軟派も積極的には手が出ない。

手亡が減収で、発表をキッカケにワッとくるだろうという考え方は、まず常識になっている。とすれば、ワッと来たら利食いしてやれという買い玉も相当にあろう。

いずれ先に行って手亡は〝なにか〟がありそうだ―というのも、穀取市場の常識になっている。誰も彼も、手亡に期待すると期待倒れになる。
天災は忘れたころにやってくる。なにかがありそうだ―と満を持していると、肩すかしになるかもしれない。ただ怖いのは人気がついた時である。今のところ手亡相場は難しいという人気で、陽気な買いムードになりにくい。

●編集部注
投〝資〟であって投〝機〟ではないぞと、文中の証券営業マンはお客様に言いたかったのだろうなぁ。

【昭和四七年十二月十二日小豆五月限大阪九六三〇円・三〇円安/東京九六三〇円・二〇円高】