昭和の風林史(昭和四七年十月十三日掲載分)

微温湯の相場 まだ底練り段階

このあたりの値段は強弱いずれにも分がある。しかし交易会を控えて強気になるのは少し早い。

十一日は東京穀取の開所二十周年で、東京の立ち会いは前場一、二節だけであった。
六日、大阪穀取の二十周年記念の後場は大穀取の休会中にアレヨアレヨと東京から気配を上げてS高となった。だから今度はあるいはその逆になるのではないかと手ぐすね引いて待ち受けていた目先筋もあったようだ。が、案に相違した平凡場面に終始した。

やはり東京の方が役者が一枚上なのか。売り方主力の阿波座筋が安値を売り込みすぎて元気がでなかったためだろうか。

ここへきて多少は強気のほうがふえているようでもある。

その理由は、①先日の先限安値七千五十円を大底と判断すれば、ここで少なくとも二千円ぐらいの反発があって当然。まして八千円前後を叩きすぎたキライがあるから一万円近くまでは充分だ。

②輸入外貨ワクの停止に見られるように政治的な配慮が今後も打ち出される可能性があるし、北海道農民の安値に対する抵抗も強いので、当面は投げ売り的な売り物は出っこないだろう。

③今年は増反、好天で大豊作だったが、来年は大幅減反が必至であるし、二年続きの順調な天候はありえない。

④したがって大豊作時の良質の小豆の現物を半年も抱えておれば、めったに損はしない―等々である。

これに対して、とにかく百七十万俵ほどのものが穫れたことは事実。来年が不作かどうかは判らないが、これだけで一年間は余りすぎるほどだ。年内三割の出回りと見れば五十万俵。小豆の俵に押しつぶされる。

そのうえ、下期ワクの発券はとりやめられたとしても残りのワクだけで二万㌧の輸入小豆は入ってくる。まして来週には広州交易会が開催されるとあっては、とても買えないというのが売り方の考え方である。

まあ、八千円から九千円に賭けての値段は強弱の均衡点である。

だから九千円以上は細く長く売ってゆけばよいし、八千五百円以下は買って塩漬けにしてもよい。

今のところ、そう力をいれて一発相場を狙う場面でない。タイミングを誤るとぬるま湯につかったようにでるにでられなくなる。

●編集部注
“S”は突然やってくる。サーキットブレーカーとは少々趣が違う、というのが個人的な印象だ。

“S”は高安関係なく、CBよりも取引参加者の頭を冷やす効力が高かったように思う。実際この時、相場は少し冷えた。

【昭和四七年十月十二日小豆三月限大阪八九五〇円・一一〇円安/東京八九五〇円・一〇円安】