昭和の風林史(昭和四七年十月十六日掲載分)

ひと相場終了 八千二百円あり

毛糸が天井した。反撃あろうと必至の売りでよい。生糸も先三本売り方針。小豆は論ずるに足らず。

「菊の香や奈良には古き仏たち 芭蕉」

現在の小豆相場は買えば騰がるというものではない。腕力で買い煽れば、一時的には言う事をきくかもしれぬがそれで大勢を変えるということは出来ない。見ていると相場は至って自然である。

週末は安寄りして安値抜けした。

明けた窓を埋める。

それでこのあとだが、交易会での小豆の契約状況が気にかかる。

豊作の上になにも交易会で契約する必要はないじゃないかと思うけれど、統制経済ならいざ知らず、自由経済では、輸入して儲けがあれば、国内市場がダブつこうが値崩れしようが商社は契約する。

相場は、もう少し下げるだろう。左様。へたすると三月限で八千三百円のところの下の窓。あれを埋めに行くかもしれない。

ストップ高(大阪市場七日)をしてから後の相場は押し目ではない。

小さな相場が〝ひと相場〟すませた格好である。

だから二月限で八千二、三百円あたり。一月限でも八千円べたべた。千円棒がはいるかもしれない。

しかし、調子に乗って売ることは感心しない。なぜならば、大底の入っている小豆だからだ。

〝早すぎた上げ〟の訂正をやっているにすぎない。八千二、三百円あたりから再び買い下がる。

手亡のほうはどうか。

深くはないが下げるだろう。先限の七千円ラインの前後は売って忘れてしまう。手亡は、人気がつきそうでもう一ツ人気が寄らない。人気の寄らない相場は怖くない。

毛糸の相場が天井した。風林流の見出しならさしずめ次のようになる。

ああ遂に毛糸大天井 目先反撃あれど売れ

奈落の底へ 音立てて崩れん

毛糸は昨年十月の小豆の大天井と同じである。

今からでも遅くない!! 千六千円割れへ

強烈な逆襲高をするかもしれないが毛糸は相場の末期的現象である。

続いて生糸の先三本も相場は天井した格好だ。

生糸先三本売り絶対 戻りあれば成り行き

いかなる仕手が介在せるも天井した相場は底するまで売りである。

ああ相場は無常。

●編集部注
 少し前に〝ソーサーボトム〟の話をしていたのに、何故売りなのだろう。

 気が変わったのだろうとしか言いようがない。

 大局を分析するのは、左程難しい事ではない。

 大局的に相場を仕掛け続ける方が難しいのだ。

【昭和四七年十月十四日小豆三月限大阪八六五〇円・一九〇円安/東京八五九〇円・二一〇円安】