昭和の風林史(昭和四七年十月十四日掲載分)

目先売り有利 逆張りの相場だ

窓を明ければ港が見える―というのは流行歌の文句。小豆の窓は明けたら埋める。埋めたら買いだ。

「きのふけふ白浪見ゆれ蜜柑山 素月」

小豆相場は、飛んで明けた窓を埋めるところである。先三本八千五、六百円のあたり、見ていると総じて強気がふえている。

大底を確認したという気分的な支えが、押し目買いのムードをつくる。

確かに八千円以下のコーヒー茶碗の受け皿のような足取りは、どう見ても底型である。

しかし、八千五百円までの上昇は、出直り相場として格好がついているが、そのあとのストップ高は、どう見ても異常で、それは、早すぎた上昇であった。

天災期の、まだ収穫予想が出来ない時分の相場なら怖い。だが大豊作。出回り最盛期。交易会。輸入品の在庫豊富。

従って、九千円以上に買い上げていくには、時期的にも早すぎるし、環境も熟していない。

だから、当面は戻り売りでよいと思う。山梨が盛んに買うから―と、一緒になって買うのは危険である。山梨は〝売るために買っている〟のかもしれない。あるいは〝よそで売っている〟かもしれないし、懐ろぐあいは、そんな平面的なものでは無いと思う。相場師は強気だから買うとは限らない。弱気だから買う時もある。

もちろん、八千五百円以下は買い下がりが長期方針で判りやすい方法だと思う。九千円以上売り上がり、せいぜい反動がついて九千五百円である。

手亡のほうはどうか。これも肩下がりで七千七、八百円、先日朝寄りストンと落として急に上げた、あの安いところあたりまでは、まだ残している。とはいうものの、手亡も六千五、六百円は底値であるから、そういう安値は弱気出来ない。

小豆にしろ、手亡にしろ、一発を狙う相場ではない。供給過剰時の需給相場である。

上弦と下弦に線を引いてたとえば小豆なら九千円の八千五百円。手亡なら七千円の六千五百円。上の線を抜くようなら、ゆっくりと売り上がっていく。
下の線を割ってくれば買い下がっていく。

いうなら逆張りである。いずれそのうち他の商品市場で活躍している投機資金が穀物にもまわってくることであろう。

あせることはない。気に入らねば見送ればよいのだ。

●編集部注
実際、海外でもこの手の線形は〝ソーサーボトム〟と呼ばれている。この〝ソーサー〟はカップソーサーから来ている。

更に言えば、九月のダイヤモンドフォーメーション上抜け後の底練りを経て、ここから二番底か二段上げ待ちの場面だ。

【昭和四七年十月十三日小豆三月限大阪八八四〇円・一一〇円安/東京八八〇〇円・一五〇円安】