昭和の風林史(昭和四七年四月十日掲載分)

陰流落し斬り 閃光一瞬S安か

桜も終わろうとしている。万朶(だ)の桜か襟の色―という場面は遂になかった。今週は暴落だ。

「湯をさせばあけぼの色や桜漬 つい女」

九月限の(大阪)引けがやっと三百十円を割った。四百四十円のところに抵抗があって(八月減は四百円にフシがある)、これが頑強に抵抗していたが、週末の引けは、あっけなかった。

戻り場面を見ていると、いかにも強そうに思える。七日金曜日あたり、阿波座筋は一万三千五百円目標/交易会までの短期決戦/産地相場を陽動/大阪に仕手介入/などと久しぶりで、口中熱っぽい情報が飛んだけれど、高値掴みの買い屋の希望的意見に終わりそうだ。

筆者は思う。先三本、千円大台を引けで割り込んでしまえば、アッケラカンのストレート安KOダウンだ。ストップ安だってあり得ると見る。

中国が売り値を下げてくれば相場に支えがない。本来ならば売り大手の三晶山梨が崩れ場面で利食いに向かって、一段落の落ち着きを取り戻すのであるが、この両社、現物抱いての売りヘッジだけに、暴落場面で手仕舞ってくるかどうか判らない。

千円割れには〝逆注〟がかなり入っている。割れから売り―という注文だ。

〝逆注〟はクロウトが相場の勢いに身をまかす戦法。激水の疾き石を漂わすに至るものは勢なりという。

乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず。治乱は数なり、勇怯は勢なり、強弱は形なり。

孫子をして〝強弱は形なり〟と言わしめた。

弱は強に生ず―とも。

金曜日の戻り(強い姿)があったればこそ。土曜は反落を見た。

そして週明けから本格的に崩れるだろうと思わせるのである。

あるいは、もう一度、逆襲してくるかもしれない。それは、またとない狙撃の対象となるであろうか。

筆者は材料を書いているのではない。地合いを縷々(るる)説いている。

この相場は、強気してもなんら見込みはない―ということを。左様、崩れてのち、そのことを知る。

国破れて山河あり 城春にして草木深し 時に感じて花に涙そそぎ 別れ恨みて鳥に心を驚かす。

多くを語ることもない。雨はふるふる 城ケ島の磯に 利休鼡の雨が降る 雨は真珠か 夜明けの霧かそれとも私の忍び泣き 雨はふるふる 日はうす曇る 舟はゆくゆく帆がかすむ―。

●編集部注
 今の国内商品取引は注文が面倒だ。これは声を大にして言いたい。
 〝逆注〟も出来る事は出来るが頗る面倒である。

【昭和四七年四月八日小豆九月限大阪一万一二七〇円・三六〇円安/東京一万一二五〇円・三六〇円安】