昭和の風林史(昭和四八年七月二十三日掲載分)

高騰か暴落か 重大関頭に立つ

インフレが激しくなるが商品相場は静かにしておらねばならない。相場は一層むずかしくなる。

「端居して妻子を避る暑かな 蕪村」

全商連では去る十九日の理事会で八月から第一、第三土曜を休む、隔週週休二日制を実施することを決めた。

週休二日制の実施は社会全般の動きで不思議ではないが、市場の規制や業界改革の進め方については、いつも意見が揃わず、万が一をさらけだしているこの業界が、こんなに早く意見が一致して実施するとは意外である。

商品相場の高騰に頭を痛める主務省あたりが、一日でも休みが多いほど人気を冷やして効果があるとの親心からかもしれない。隔週週休二日制の実施の当否は別にして、今後業界は、これと同様意思統一を迅速にして、よいと思うことは、どしどし実行すべきだろう。

このところ商品相場は、だんだんとプレイグラウンドを狭められてきている。今年の春から毛糸、人絹が半身不随となり、生糸も一時立ち会い停止となった。投機資金は品がすれのおそれのない穀物と砂糖とゴムに集中したが、手亡は既に上限にハリついた格好。出来高も毎節二桁台にすぎなくなっている。

小豆も現物ヘッジの売り方のために考え出された長期受け渡し制度が逆にサヤ取りに利用されて、有りガスレを一段と強くして、買い方の出方次第ではどんな値段でもつけられる情勢となった。

そのため農林省が二万円をつければ市場の一時停止も辞さないといったとか、いわないとかいうことで、各取引所とも規制をさらに強めたため、商いの先細りは避けられない模様。

取り組み、出来高ともにトップの砂糖にも増証がかかり、ゴムも今後の推移によってはさらに規制の強化もありうるだろう。

インフレ抑制策に決め手を欠く政府が一番弱い商品市場に介入する度合いはいよいよ強くなる一方である。

国際商品市場の高騰、投機資金の増大による押し上げと国内インフレ抑制の圧力とで、上へも下へも動けない商品市場と化すおそれが多分にある。

今のところ、懐ろに温みが残っているからそうでもないようだが、これから先のことを考えると、経営者もセールスマンも安閑としておれない。

商取業界の興亡この秋にあり―と言っても過言ではなかろう。

●編集部注
 興亡を巡る攻防の結果を知るだけに胸が苦しい。

 休みという一点だけを見ると商品市場は先進的であった。ただ、それは取引所が休んでいたというだけで、取引員の中でしっかり休む人、休める人は非常に少なかった。

【昭和四八年七月二一日小豆十二月限大阪一万八一三〇円・二五〇円高/東京一万八六〇〇円・二一〇円高】