昭和の風林史(昭和四八年七月五日掲載分)

自信とゆとり 変幻自在の大手

手亡のS安につりこまれて売ればまた上にかつぎ上げられる。翌日に玉を持ち越さぬことが肝要。

「落雷のあと生々し尾根伝う 緑水」

三日はほとんどの商品が突然崩れた。僅かに前日に比べ高かったのは綿糸の一部。

小豆、手亡、生糸がS安。ゴム、人絹、乾繭、砂糖も軒並みに安かった。荒れると言われる。荒れるといわれる二日新ポの今月の相場を暗示しているようだ。

そのきっかけは小豆の崩落だが、それも手亡の規制強化を嫌気した玄人筋の手仕舞いに端を発したもので、これという材料が出たわけのものではない。

あえていうなれば強気が多くなった。イレが相当に出たからにほかならない。

相場のスケールやその持っているエネルギー、あるいはリズムからいえば月末ごろに一押しあってしかるべきところであったが、たまたまニクソンが大豆や綿実に輸出制限をすることを発表したので、たちまち連想的に手亡が買われ、つられて小豆も一気に新高値に買われた。そして買わしたあとは急反落である。行き過ぎただけ悪くなった。

アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひくと前からいわれたものだが、ニクソンの一言が日本の大豆需要を狂わし、手亡や小豆の投機家をまどわした。

殺生なニクソン大統領さんといえよう。

さて、産地の天候は順調、作付け面積は道農務部発表では六万九千三百ヘクタールだが、あれは五月十五日現在のこと。小豆相場の急騰から下旬にはずいぶんと小豆を播いたところが多かった模様。結局、今年の作付け面積はやはり七万三~五千ヘクタールということなるらしい。

そうすると平年作でも百六~七十万俵は堅い。それでも二万円まで買えるだろうか。

大豆は必需品だが、なにぶん小豆は嗜好品の性質が強い。高ければ消費はガッツリと落ちるのは当然。

しかも世界的に豆類の需給が逼迫しているといっても小豆を食べるのは日本や中国、韓国だけ。

こう考えると売りたくなるのだが、まだこのハナ売りこむとまた買い方大手の術中にはまり込んで手痛い目にあう。

買い方に充分な資力と自信がある。それを支援するインフレムードがある。

買いつけば叩き、売り込めば煽る。まだまだ仕手の独壇場だ。

●編集部注 
 この年の四月から、日本テレビでドラえもんが放送されていた事を知る。

【昭和四八年七月四日小豆十二月限大阪一万八一五〇円・一五〇円高/東京一万八四〇〇円・二八〇円高】