昭和の風林史(昭和四八年三月三日掲載分)

市場守るため 仕手を排除せよ

市場がどうなろうと儲ければよいのだという考えがないでもない。取引所も業者も大事な時期だ。

「白酒の紐の如くにつがれけり 虚子」

東洋経済の三月三日号は世界の食糧危機を特集している。その中で朝倉正気象庁予報官の〝地球をおおう異常気象〟は、読む者をして寒(さむ)気をもよおさせる。

NHKテレビでも異常気象について報じる。

小豆相場は、天候異変を先買いしている。

東洋経済の来週号は商品先物市場を特集する。その中の座談会で商品業界側からは、神戸商大の高橋弘先生。全協連の山口専務理事。東穀の森川企画室長。東繊日報の岩本厳氏。そして筆者の顔ぶれ。

農林、通産両課長のインタビュー記事と商社関係者の、現在問題になっている投機についての談話などで商品取引所を解剖する。

商品業界は毛糸、生糸の市場が未曾有の状況下にある。過激な投機を排除すべく規制は強化されている。

また三月一日、全国の商品取引所の理事長が集まって会議を開き「公正な価格形成に全力をあげるよう」との声明文を発表した。

農林、通産両省も(28日)取引所での過当投機を懸念して両局長から「市場管理を強化するよう」通達が出された。

衆院本会議でも商品投機をめぐって質疑応答がなされるなど商品業界を含めて情勢は、いよいよ厳しくなりつつある。

この時、小豆相場は過当投機規制という政治的な動きと国民世論を気にしながらも、世界的食糧不足と異常気象予想。またインフレの激しさ。そして他商品が激しく規制されていることから比較的ゆとりのある穀物市場に投機の目が集まり、品物が多くても高いという動きを利用した巧妙な買い方仕手の作戦が、うまく進みつつある。

しかし、思うに、これがこのまま進むようなら穀物市場は、毛糸の二の舞という市場機能が狂ってしまう最悪の事態を迎え、自らの手で取引所取り引きを破壊してしまうことになりかねない。

業界はこの際、主務省通達にもあるように「仕手と目される委託者からの注文は厳に慎み」過当投機の場にならぬよう業界を守らなければならない。

●編集部注
世界的食糧不足と異常気象予想、そしてインフレ。この先の世界を暗示しているようでもある。

【昭和四八年三月二日小豆八月限大阪一万五一四〇円・三八〇円高/東京一万四九九〇円・三七〇円高】