昭和の風林史(昭和四八年三月二日掲載分)

今年も異常? 先走る不安人気

天候不安を買うのはまだ早すぎる。行き過ぎた分の訂正は必至。噴き値売り。世論の動向にも要注意。

「流氷や宗谷の門波(となみ)荒れやまず 誓子」

雪もまだ消えぬし、これからもまだまだ降る時期というのに、穀物相場、とくに小豆相場は完全に天候相場の様相である。

月末のS高にしろ、規制強化(建て玉制限や八月限証拠金の引き上げ)が売り方の踏みを急がせたこともあるが、朝のNHKのテレビ番組〝スタジオ一〇二〟で北海道オホーツク海沿岸の流氷をとりあげたのが、今年の夏の天候不安人気をたかめて大衆買いを誘ったとも考えられる。

その番組では、平年なら今の時期はビッシリと張りつめている流氷が、今年は暖冬のため島状にちぎれて浮いている。そのためもしこの流氷が海流に乗って太平洋岸に流れだすと千島列島にのって南下し、北日本に低温をもたらす事もありうるというのであった。

今年になってからの大豆や羊毛の異常高の原因が、異常天候にあっただけに大衆投機家の天候に寄せる関心度は非常に強い。

だからこうしたちょっとしたキッカケが大きく響く。

その余韻をひいて一日に生まれた八月限は一万五千円に近い値をつけ、なお大衆買い人気が旺盛である。一万五千円大台乗せは目前ともいえよう。

しかし当、先のサヤは二千円以上もある。このことは仕手の巧妙な作戦にもよるが、大衆が天候不安を背景にしてムードで買っているからにほかならない。

前月の納会にもみられたように、渡し物は次第にふえている。三月、四月は需要期だといっても次第に俵の重みが加わってくる。

また、商品投機に対する世論は日ましに高まってきている現状から、このハナ一万五千円から六千円ともなればどうなるか。

そしてもし強気が期待しているように、万一今年が天候不良で凶作とでもなったら、どうなるだろうか。

既に毛糸相場は半身不随、生糸相場もそれにならおうとしている折柄、小豆相場の前途も楽観できぬ。

そこで目先の相場の動きだが、五日の在庫発表で売られたら十日発表の暖候期予報期待でまた買われるだろう。

そのあたりの噴き値は売りたいところ。天候不順を先取りしすぎているトガメが必ず表面化するだろう。

●編集部注
そのトガメが表面化する場面が何処か判らないから人は苦労するのだ。

ただ、市井に広まった所は天井になりやすい。

【昭和四八年三月一日小豆八月限大阪一万四七六〇円/東京一万四六二〇円】