昭和の風林史(昭和四八年九月二十一日掲載分)

高値を追わず 彼岸底練り段階

20日彼岸の入り。小豆相場は彼岸底練りにはいる。突っ込み買い。手亡は高値追いの相場。

「ふたたびは来ることもなき栗の路 夜半」

九月11日の小豆の安値はケイ線で〝こぼれ星〟になっていて十一、十二、一月限のそれぞれは、これを取りに行きたいマドをあけているが二月限はピタッと埋めて、九、十月限の前二本も18日に穴を埋めた。

こうなると期近限月二本は完全に二番底型で、20日が彼岸の入り、月齢は下弦の二十四日ときては下げようがない。

19日は全商品オール安で株式相場も安かった。近ごろは、こういうことがよくある。即ち連結相場で親亀こけたら子亀もこけるのである。

ところで小豆の需要であるが彼岸、行楽の需要最盛期。それに今年は伊勢神社の二十年に一度の遷宮で参拝客は全国から増勢を辿っている。

伊勢神宮に参拝した帰りの、お土産は―〝赤福餅〟ぐらいである。これが飛ぶように売れている。

たった八千円台の小豆。需要家は、いまこの安い値段を買っておくべきだ。先物市場の先限を買い建てしておけば倉庫も倉敷料も不要である。

年間を通じ、どの程度の小豆が必要であるかは需要家各自判っているのだから今のうちに買いヘッジしておけば相場が高くなっても陳情したり騒ぐこともない。
昔は相場が安いと、まだ下がると思って買い手控えたものだが、今や製菓業も近代経営、計数管理で砂糖も小豆も定期市場での買いヘッジは盛んに利用されつつある。

さて相場は、新穀一本、旧穀受け渡しの出来なくなる四月限から買いだ―という考えが穀物投機家筋に支配しだしたが、四月限の生まれは十一月。恐らく四月限は上ザヤを買って人気化するだろう。それなら来月生まれの三月限も人気面に影響を受けようから十月新ポから買いだ―ということになりかねない。

大幅の減反と九の字のつく年の凶作。これが将来の希望である。というのも今年の相場で誰彼れ皆様おしなべて大損を出した。ようし取り戻してやるぞ―と来年の大相場に夢を持つ。

目先的には悪目買いの小豆だ。11日安値を切れば絶好の買い場となろう。
手亡のほうは大もちあいの新値を買い切ってからの相場となろう。

●編集部注 
 初めは単純なインスピレーションで始まったこの昭和記事の連載。個人的には悉く勉強になる。
 チリクーデターに続き、第四次中東紛争が十月に勃発する。世界的に不穏な状況下の相場や如何に。

【昭和四八年九月二十日小豆二月限大阪一万一〇〇〇円・一一〇円高/東京一万〇九八〇円・一三〇円高】