昭和の風林史(昭和四八年九月二十二日掲載分)

小豆は底練り 手亡は上昇指向

小豆より高い手亡の制限値幅が小豆より手亡のほうが小幅という事に疑問を持たないのが疑問だ。

「甲賀衆のしのびの賭や夜半の秋 蕪村」

二日続きの休みの明けはどうも相場が崩れやすい。23日の日曜は、秋分の日の祭日と重なって休日が月曜日に繰り延べになるから火曜日の相場が無気味である。

小豆市場は総じて気迷い人気である。大勢的には買い方針でよいのだが、まだまだ相場が直っていくには日時を要する。

目先巧者筋は突っ込み買いの戻り売り、小幅の逆張りで泳いでいる。

玄人筋は手亡相場の品薄性に照準を合わせ、これが一万四千円相場は、いずれ実現するだろうと期待している。

手亡のケイ線は一万四千円を中心にした大きなかたまりと、一万二千二百円を中心にしたかたまりがあって、現在は一万二千二百円中心の圏内に相場が位置し、これが一万二千九百円買い、三千円買い―と先限が戻り高値を更新すると一万二千円以下の売り玉が踏んでくる。

一万二千九百円抜けからの手亡は一万三千五百円までは一本道である。

高野素十氏の句に、まっすぐの道に出でけり秋の暮―というのがある。

うねり、うねりと、もむだけもんで、スイと離れてしまうと一本棒の一万四千円相場。

考えてみれば小豆が大豊作。在庫豊富。先行き大量のタナ上げでもしないことには相場妙味も湧いてこない。

その間、手薄手亡でお茶を濁そうというわけだ。ところが品薄だけに規制されやすい。

土台、小豆相場より高水準の手亡相場の制限値幅が小豆より小幅であるという事に疑問を持たない取引所や市場の管理に疑問を持たなければならないのに、なんら手がつけられていない。

もっと言えば、相場が荒れると制限値幅を小さくしようとする日本のやり方がおかしい。

値段が大きく動くには、動くだけの理由があって動くのであるから、そういう時は制限値幅を広げるのが本筋である。

なぜ手亡のストップ幅が五百円で、小豆のそれが七百円なのか、おかしいではないか―と、思わないのだろうか。手亡に人気が寄らないのも案外そういうところに、わけの判らなさがあるからだろうと思う。

●編集部注
 練れば練るほど良い餡が出来るとは限らない。
 フレッシュなうちに機敏な作業をこなさないと腐ってしまう事もある。 結局、後手後手に回った市場管理が手亡相場を腐らせてしまったのは後の話。CBのある今では隔世の感があるが。

【昭和四八年九月二一日小豆二月限大阪一万一二九〇円・二九〇円高/東京一万一三三〇円・三五〇円高】