昭和の風林史(昭和四八年九月二十日掲載分)

突っ込み買い 手亡は新値買い

小豆の一万一千円割れは買い方針。手亡は先限一万二千七百二十円抜けから大型の波乱相場へ。

「夕焼のあへなく消えし案山子かな 万太郎」

大垣の大石吉六氏と相場師・大沢毅氏と中央商品の伊藤善一社長が北海道の豆作状況を視察に行って19日夕刻帰名した。

大石吉六氏は来年の事も考えて、今からの小豆相場を大きく見ている。当面、品薄の手亡に力を入れ、三月限、あるいは四月限の生まれるあたりから大幅減反(恐らく来年の小豆は今年の作付けから二万ヘクタールは減るだろうという見方)と49年凶作予想で買い計画を立てようという遠大な構想に基づく下調べで心は早くも来年の相場にある。

名古屋版の毎日新聞に桑名の板崎氏が三重県に一億円を寄付した記事が顔写真入りの囲みで掲載(18日朝刊)されていた。

『やるやんか板さんも。ひと口に一億円といっても出来るもんではないよ。相場界ではいろいろ噂されているが偉い人だ』―と、ささやかれていた。

板崎氏は現在手亡におよそ三千枚の買い玉を建てている。大石商事の大石俊司社長によれば、手持ちの小豆現物は全部定期にヘッジし、来春まで手亡相場を強気したいと言っている―と。

板崎氏は手亡の買い玉を一万枚までふやしたいようであるが、急激に高値を持っていくと規制の強化を呼ぶだけに、安いところを仕込むしかない。

おりからピービーンズ一千㌧の輸出(FOB四七五㌦)がオランダ向けに決まった。取り組みさえ太れば手亡の相場は暮れから春にかけ面白い動きとなろう。

ケイ線的には先限で(大阪)一万二千七百二十円を勢いつけて買い切ってしまうと下げ幅(二千百五十円)の倍返しで、安値から四千三百円高、即ち一万四千八百円が約束される。

小豆のほうは米常安田祥雲斉氏によれば九月11日の安値は三市場毛抜き型でこの安値を下回る場面があろうが、そこは買い場になる。名古屋の一万四百円割れは買いだ。静岡の栗田氏も生糸の下げでやられたが、小豆では大勝利だった。彼は来年の小豆相場に期待し、現在は乾繭を中心に活躍している―と。

19日、土井商事の土井宏二社長の還暦のお祝いと土井商事創立20周年祝賀が内輪で盛大に行なわれた。

相場のほうは小豆、手亡の突っ込み買い方針。

●編集部註
中三トリオ全盛の頃の一億円如何ばかりか。

【昭和四八年九月十九日小豆一万〇八九〇円・四六〇円安/東京一万〇八五〇円・六五〇円安】