昭和の風林史(昭和四八年二月二十日掲載分)

反動はきつい 狂気の沙汰なり

調子に乗っていると小豆は物価対策の〝いけにえ〟として血祭りにあげられよう。政治が介入する。

「野火かなし十国峠越ゆる夜を かけい」

生糸の爆発が続いているし、毛糸、綿糸、乾繭など繊維相場の騰勢は、まさしく凄い。一体、どうなるのだろうという不安がつきまとう。なまじ毛糸の取引所相場を小細工したため、その反動もある。不自然にしばっていたロープがほどけたため、荒れ馬が奔走した。それに刺激され〝暴走〟がはじまった。手がつけられない。

この反動はどこかできついものになるだろうが、今はまだ実需と仮需要の火が燃えさかっているから逆らうことは出来ない。

ゴム相場も投機買いの対象となり暴走気構えである。

小豆にも換物人気の強力な買い注文がはいり、先限一万四千円台。

線としては一万三千五百九十円から一万二千八百円までの下げ幅〔九百九十円〕の倍返し、即ち一万四千五百八十円地点が目標値となる。

現物は倉庫に入りきれないほどある。しかし長期限月にヘッジされている。これらが〝場勘〟で攻められ、踏まされている。

勢いというものは本当に怖い。

ホクレンが棚上げを放出しようと、燃えている相場はまったく気にしない。

理解できないという人。理解していても、ついていけない人。
怪物が〝のたうち〟まわっているような感じだ。然り。国境も、感情も、理性も持たない、ニヒルな巨大な投機資金が這いずりまわっている。

規制されていない市場は砂糖と穀物だけである。どうしても赤いダイヤの小豆に投機の関心が集中する。

しかし、週明けは踏みもかなり目についた。大衆筋の安心買いも目立つ。そして一万四千五百八十円の倍返し地点まで残す値幅も少ない。

いいところに来ていると思う。熟しきった感じである。

いや、一万五千円だ―と勢いに乗って進軍の旗をふる人もいようが、政治的配慮と、政治的圧力によって物価対策の〝いけにえ〟として小豆は血祭りにあげられることであろう。

雑豆の自由化。大口投機家の氏名報告。小豆の緊急輸入。指定倉庫の拡大等。風当たりはいよいよきつくなる。

●編集部注
 その血祭りの結果で、まあ、この有様である。

 兜町から鎧橋を渡った先の、無駄に荘厳な穀物取引所は取り壊されて豪華マンションになった。

 『百年の孤独』の商品業界版とでも言うべきか。

【昭和四八年二月十九日小豆七月限大阪一万四三九〇円・四六〇円高/東京一万四四〇〇円・四四〇円高】