昭和の風林史(昭和四八年二月十二日掲載分)

暴落が接近!! S安も可ならん

小豆は崩れそうだ。日柄の疲れが出ている。先限の一万二千円割れか。暴落の危機せまる。

「一皿のさよりに酒をすごしけり 占魚」

なんとなく厭いてきた小豆だ。感激がない。新鮮さがない。魅力がない。誰もがそう重いながら各節を見ている。

通貨、通商問題で株式市場は波乱を展開している。商品先物市場にもそれが大きく影響している。

円の切り上げはもはや避けられないという見方に一致している。その時、商品相場もショック安があろう。そのショック安を買うべきかどうか。そこのところの判断が難しい。

小豆のほうは目先筋が逆張りで泳いでいる。突っ込み買い、戻り売り。
しかし、だんだんケイ線は三角もちあい型を鮮明にしつつある。放れる前兆と見る。上か。下か。相場金言は放れにつけという。

土井商事の小林信夫常務が蛎殻町の土井商事東京営業所の応接室のソファーに、靴を脱いで電灯もつけず座っている。お役所から帰ってきたところである。
小豆と手亡の目立つ買い建て玉を国会開催中のお役人は気をつかっているのかもしれない。

〝良識の土井商事〟。小林常務は『他人さん(お役所や取引所)が心配してくれる以上に、われわれは充分に配慮している。決して無理なことはしていない』―。

売っている人たちから役所に投書がいくようだ。なんとも卑劣なやり方である。役所も、その間の事情は充分承知しているが、とにかく国会開催中である。〝物価に〟については異常なほど神経質になろう。

さて、その間に相場はどういう動きをして行くことであろうか。

判りやすいのは、噴いたところを売る。ワッとくれば絶好の売り場だ。

この小豆、仮に硬材料出現でS高をしようと、今度の新値抜けば決然売りだ。
崩れたらどうか。一万二千円以下買いである。

新幹線列車は順法闘争の影響で大幅に遅れ、しかも超満員。緑色のボタンは送風機。それでも熱気充満、葡萄色の冷房のボタンも光っている。車販はすぐに売り切れ、ビュッフェは立錐の余地なく、マイクは九州方面への接続列車の案内を繰り返す。その間、業務連絡、業務連絡―と叫び続け、順法闘争も楽ではない。国鉄ダイヤが狂う時、赤いダイヤも狂いがこよう。

●編集部注
昔のクレーマーは手紙であったのだなぁ―と、この文を読んで思った。

【昭和四八年二月十日小豆七月限大阪一万三〇五〇円・一二〇円安/東京一万三〇六〇円・四〇円安】