昭和の風林史(昭和四八年五月九日掲載分)

好運の女神は どちらにつくか

小豆の基調は大相場型で、押すもよしのところ。いずれ凄い踏み上げ場面があるだろう。

「いと薄き繭をいとなむあわれさよ 虚子」

46年10月二万一千四百円という高値を付けた小豆、その日は帯広地方に降霜があり氷結した七日である。

いわゆる〝壮絶な増山相場〟である。三晶も踏み、近藤紡も踏んだ。

あの相場の今時分は一万三千五、六百円であった。

相場水準から申せば46年大相場の五月上旬と同じ水準である。

五月19日に一万五千五百四十円を付け、千五百円幅の押しを入れて六月23日の一万六千四百円に向かうのである。

この相場が火を噴いて止まらなくなった出発点は八月16日、一万四千七百円からのことである。

五月、六月、七月と相場は五千円と六千円の間で高なぐれ状態だった。

今年は46年の時より二カ月早い三月十日の、昔で言う陸軍記念日に一万五千三百円を付けて、いま出直り過程にある。

46年は仕手相場→天候不順→踏み上げ→決定的冷害というパターンである。

今年は仕手傾向→インフレムード→不順予想という段階にまで来ている。そして期せずして五月七、八日。46年とまったく同時期、同値となっている。

歴史は繰り返すと言うけれど、相場も所詮(しょせん)は繰り返しに過ぎない。

いま、一万五千五百円などと言えば、在庫が50万俵以上もあるのに―と誰でも思う。

しかし当時と今とではインフレの度合いにしても、物の値段が随分違うのである。

また買い主力にしても当時の買い大手は二年越し長期戦を闘っていた。現在の買い大手は、ツキというものを持っている。

相場戦線でのツク、ツカヌは決定的要因である。

四斗樽一杯の才能、大型トラック一杯の資金よりもサカズキ一杯の好運が、どれほど勝(まさ)っているかは、過去のどの相場勝者を見ても歴然としている。

ツク、ツカヌは天にある。そして周期、サイクルがある。このツク、ツカナイは年によって売り方、買い方にも作用している事が判る。たとえば霜が降りるにも日曜日の朝と、月曜日の朝とでは、かなり影響度が変わる。

さて今年の相場は、どちらさんの肩の上に乗っかるか。

●編集部注
 黄金週間明けで相場のリズムが歪んでいる。砦は五月二日の安値にある。

 売り方はこの安値を突き崩さんと売ってくる。

 買い方はこの安値を死守せんとそれを買い拾う。

【昭和四八年五月八日小豆十月限大阪一万二九四〇円・五二〇円安/東京一万二八九〇円・四六〇円安】