昭和の風林史(昭和四八年五月八日掲載分)

強靭な相場だ 難なく五千円か

押し目がはいると、俄然相場は硬度を増し強靭になる。一万四千五百円目標が言われる。

「鍋祭かつぎの人も見に参る 句仏」

滋賀県米原市の筑摩神社の祭礼は、この一年間に娘が男に許した数だけの鍋を頭にかぶって供奉したそうで、昔はそれを見にくる人が多かった。いまではそういうことはしない。著しくプライバシーを侵害することになるし、仮りに五ツも六ツも鍋を重ねて出てくれば露出狂もいいところ。地方に行くと、このような奇習、奇祭の名ごりが残っていて、昔はそれが、なによりの楽しみだったようだ。

連休明けの小豆相場は強い基調がゆるまない。押し目を入れても、これをはね返す力を持っている。安値から二千四、五百円幅を斜めに買い上げ、半値戻しを難なくやってしまった。

昨年十二月から三月十日までの大きな上昇波動は①強力な買い仕手の出現②豊作人気で売り込まれた取り組み③インフレムード―などによるもので株式、生糸、毛糸、大豆など、あらゆる商品にまでインフレ買いの熱気が襲いかかった。

その後、三月、四月と国会で商品投機が問題にされ、緊急輸入、金融引き締め、大手証券粛正、商社攻撃、規制強化―と、インフレ防止に必死の対策が打ち出され、さしもの株価もまた商品も熱がさめた。

しかし考えてみれば物価高騰は、ちっとも止まっていない。これで国鉄運賃の値上げなど決まれば百花りょう乱、一度に物価は上昇する。物価上昇には反対だが、物価上昇反対の消費者運動には参加したくないという日本人の気風を衝いて、インフレ熱は再び燃えあがる気配が見える。

この時、現実に異常気象に直面し、品物はあるけれど、今年の作柄がどうなるか判らない―という不安な

人気に包まれれば、小豆相場も、手亡相場も、それこそ先高見越しの仮需要に火がつく。

投機は、なんら罪悪ではない。むしろ投機をしない者のほうが罪悪である。

一万一千円大底。50万俵60万俵の在庫があっても大底。一万二、三千円は地相場。難なく二千五百円を反発した相場そのものの実態を直視しなければならない。そしていよいよ天候相場。一万四千五百円が五千円抜け必至となっても、なんら不思議なことではない。

●編集部注
 教科書には主要な事件しか記載されていない。
 オイルショックは教科書に載っている。ただこの記事を読む限り大事件の前段階で何らかのシグナルが出ているようだ。

【昭和四八年五月七日小豆十月限大阪一万三四六〇円・九〇円安/東京一万三三五〇円・一四〇円安】