大相場に発展 買い玉を放すな
相場はまた新しい段階に突入してきた。目先のアヤにとらわれず買い方針を堅持すべきだ。
「青あらし定まる時や苗の色 嵐雪」
もう北陸以北の米作地帯では田植えも大体終わったところが多いだろう。
豆類の主産地・北海道でも、いよいよ種まきが始まった。四カ月にわたる長丁場の天候相場のスタートである。
これから九月の末ごろまで北海道各地の天気や温度や、気象台の長期予報を材料に売り方、買い方が正反対の立場で一喜一憂する。毎年のことながら小豆相場をする者にとって全く気の落ち着かない期間である。
さて、去る十二日の関東養蚕地帯の降霜は播種前の小豆には全くかかわりのないことであったにしろ、ムード的に買われて戻り新値をつけたあと、現実の産地の天候は今週になって好天、高温に推移している。それだのに相場は堅調そのもので、先限は新値追いとなっている。売り方にとってははなはだ気持ちの悪い相場の動きである。
この理由はなんだろうか?。まずインフレ懸念だ。投機抑制政策で株式市場からも商品市場からも春のような異常な投機ムードは消えたようだが、インフレが収まったわけではない。とにかくカネよりモノを持っていたほうが得だということは今後も認識されるだろう。
それと異常気象による世界的な食糧不足時代到来の可能性もある。
農林省食品綜合研究所室長も「今後、世界の気温は下降線をたどり、ここしばらくは年平均で一度ぐらい下がり、近い将来三度ぐらい下がる」とおだやかならぬ発言をしている。
平均気温が三度下がるとどうなるか。わが国でいえば熱帯性植物である稲はまず壊滅的な打撃を受けることは必至だし、世界各国の農業生産、すなわち食糧生産が大幅な減収になり深刻な食糧難が到来する。
事ここまでくれば小豆相場どころではないかもしれないが、このように今年以降の気象の先行きには不安がもたれているわけである。
二日や三日の好天気、好順気で弱気ができない大きな原因がここにある。
もっとも相手は気まぐれな〝お天気〟のこと。昨年のような〝一発高温〟で大豊作となることもありうるかもしれないが、今ここで弱気をする手はない。
大勢はあくまで買いである。今年の相場のスケールの大きいことをまず充分に認識して相場に対処することが必要である。
●編集部注
大相場では〝常識〟が取引の邪魔をする。如何に〝阿呆〟になりきれるかに全てがかかっている。
【昭和四八年五月十五日小豆十月限大阪一万三九九〇円・五〇〇円高/東京一万四〇四〇円・六四〇円高】