相場のお臍は 一万五千五百円
上値一万八千円。下値一万三千円。相場のお臍は一万五千五百円。当分戻り売りの相場だ。
「林苑に秋立つ蝉のこえ激す 悌二郎」
産地は雨のあと快晴。積算気温も平年作予想である。
消費地には七十万俵の小豆の在庫。
昔なら―と、いっても二、三年前なら、ただの七千円台の相場である。しかも作付け面積七万ヘクタール。
百六十万俵収穫予想の上に九月末八十万俵在庫なら二百四十万俵という尨大な数量だ。
ところが、昨今の市場は一万七千円を涼しい顔で付けている。ただの七千円と一万七千円とえでは一万円も違う。
小豆の産地費も、流通の費用も、なにもかも高騰しているから、一万円割れという相場は今後ありえないだろうが、作柄と在庫数から見て、二万円抜けという相場もあり得ない。
それでは、どのあたりが一応の妥当と思われる値段となるのだろうか。
農家の採算基準を一ヘクタール当たり二万一千円と見て平年作なら一俵一万一千八百円ないし一万二千五百円なら充分である。
八分作で一万四千円。七分作で一万五千五百円。半作で二万三百円。
今の相場水準は六、七分作の値段である。
全道平均現時点で九分作が予想されている。九分作なら農家は一俵一万三千円で売って充分採算に乗る。いや、かなり儲かる勘定だ。
現在の相場一万七千円との差額四千円替えは、①収穫までの危険負担料と②先物市場の人気量③プラス・インフレ換物人気と④大手買い方の存在が含まれている。しかし、①在庫七十万俵と②作況上り坂、平年作の可能性③実需停滞などの要因を、そこから差し引かなければならず、それを千円と見るか二千円と見るか、あるいは三千円と見るかでこの相場の下値の目途が違ってくる。
安値一万三千円。高値一万八千円。その差五千円―という大胆な円をグラフに記入してみる。五千円替えは、ちょうど二万円。今の証拠金額に当たる。円の中心点は一万五千五百円。今後の相場のお臍(へそ)はこのあたりになるのではないか。そして上限、下限は五千円の一割五百円の行き過ぎ即ち高値一万八千五百円下値一万二千五百円。キメの荒い見方でどうだろう。
●編集部注
サンチャゴに血の雨が降るのはこの一ヵ月後だ。
金大中事件しかり、チリ・クーデターしかり、世間ではこの時期、物騒な事件が立て続けに起る。 相場も、ここから更に物騒な動きになっていく。
【昭和四八年八月七日小豆一月限大阪一万六九四〇円・一四〇円安/東京一万六九三〇円・二二〇円安】