昭和の風林史(昭和四八年八月十七日掲載分)

売りあるのみ 豊作相場展開へ

決定的に崩れるのはこれからである。先限の一万三千円は割ってしまうだろう。売り一貫。

「法師蝉煮炊というも二人きり 風生」

その後も申し分ない天候に恵まれて小豆の作況は平年作予想から豊作予想に変わってきた。八月十日現在の時点で百八十万俵。今後の天候によっては二百万俵も可能とされている。

そうなると七月末現在の消費地在庫七十五万俵という数字が、あらためて重たいものに感じる。

各穀取の取引員は次次と産地視察に出かけるが、いずれも平年作を予想し、産地を見たら、とても強気になれないと言う。

また手亡も大幅減反だが豊作は決定的で四十万俵を上回る予想が出ている。

注目される20日の農林省発表は48年産豆類の作付け面積と八月一日現在の作況を午後三時過ぎに行なうが、道農務部資産尾小豆六万九千二百五十ヘクタールをどの程度上回るかに関心が集まっている。過去の例だと農林省発表数字は道農務部資産数字より常に多いことから、七万ヘクタール大台に乗るのではないか。

作況のほうは中間地帯の干ばつが、まだ解消されていない八月一日時点のものだけに現在の状況とは、かなり違うものが出よう。

ともかく史上最高の作付け面積の小豆。史上最高の在庫量。そして豊作となれば、仮りに投機人気が張りつめているとしても相場は上値を常に実弾で圧迫され、現物売りのカラ買いという取り組みは時に予想外の安場をつくることになりかねない。

市場が熱気を帯び、相場も若いときなら、いけいけムードで水準を維持し突き上げていくことも可能だが、すでに日柄を経過し、嫌というほど高値で買いつき、カラ売り玉は踏み終わり、しかも規制が厳しく新規玉は少ない。

単に強力で強大な買い仕手が存在するだけというのでは、とても相場は上伸のしようがないのである。

湧くような人気、市場が割れるような出来高、売り込まれた取り組み、しかも若い相場という要素に、決定的な支援材料がなければ大相場の展開は不可能だ。

戻りを見ていてもなんとも鈍いきのうきょうの相場である。

買い方の巻き返しがあろうと、もう怖くはない。

徹底して売るところである。人気は弱くなったが、崩れるのはこれからである。

●編集部注

一般的に、日本の高度経済成長期の終焉は昭和四八年といわれている。大団円が近づいている。

【昭和四八年八月十六日小豆一月限大阪一万四七九〇円・八〇円高/東京一万四八六〇円・六〇円高】