徹底して売れ 地獄の底までも
この相場は戻すだろう。しかし戻ったところは必殺の売り場になる。S安三、四発分が残っている。
「いざ急げ火も妙法をこしらえる 一茶」
買い方は投げ、売り方は利食う。この相場は、まだこれからが安い。東穀の代行尻は二千四十五枚の早渡しがぶらさがっている。
下げ幅がきついという見方は当を得ていない。余分に上げ過ぎたのである。行き過ぎた相場が反省期に入っただけである。
新穀百六十万俵の出回り予想。消費地在庫十月末七十五万俵の予測。仮りに鬼が笑う来年の天候や作付け面積を強気筋が唱えているようなものとしても、一度は一万三千円を割ってこなければ相場にならない。
思えば、今年の天候相場は仕手筋の動きばかりが表面に出て、作況は軽視されていたきらいがある。しかし、それは単に一時的現象であったことに気がつく。
作柄に関しては、まったく恵まれた年であった。高温多照、かんばつに雨。平年作は問題ないようだ。本来なら、この天候相場は売り方にツキがまわっていた年である。
それをインフレ人気、大衆パワー、強力な買い方の存在、他商品高―というかつて見られなかった革命的背景と要素から増反・順気、そして未曾有の在庫量を全く無視して騰げ続けた。
今にして思えば、自然の流れに逆行し、まるで流れの早い川を川上に向かってモーターボートでのぼっていった格好である。
規制に次ぐ強力規制で人気は離れ、買い方には知らず知らずのうちに尨大なちょうちんがつき、自らをして断頭台上に立たしめる結果となった。
相場は戻り売りである。とりあえず、当面の下値目標は先限一万三千五百円。
作柄によほど影響するなんらかの現象でもない限り、終局は一万三千円割れの相場である。
46年の増山相場は10月7日に大天井して47年1月12日まで三カ月間を下げた。
48年の相場は7月13日金曜日大天井。三カ月下げるとすれば少なくとも十月中旬以後までは底が入らない。
当面、千円戻しは無理として五、七百円の戻りはあるはずだ。もちろん成り行き売りである。
S安の三、四発分は、まだポケットに残っている相場である。規制が緩和されたら値の居所にもよるが、必殺の売り場になろう。
●編集部注
この当時の韓国大統領は朴正煕。今の大統領、朴槿恵のお父さんである。
金大中が東京で失踪してソウルで見つかったのはこの頃。反朴運動が高まる流れは今と似ている。
【昭和四八年八月十五日小豆一月限大阪一万四七一〇円・六〇円安/東京一万四八〇〇円・一〇円高】