昭和の風林史(昭和四八年六月一日掲載分)

噴き値袈裟に 六月の崩れ壮烈

新ポ、ワッと湧いた値が頭になろう。値段としては一杯のところ。袈裟に斬れば六月崩し壮烈。

「とうすみはとぶよりとまること多き 風生」

月末は業者間の決済の関係で手仕舞いの商いが集中するため異常な動きをしがちだ。

それと六月新ポは、本年産小豆の新穀の相場が建つ。

新穀は格差分だけ上ザヤを買われるし、御祝儀気分もあって、十月限より七、八百円ほど高く値がつく。当然、先限高に刺激されて旧穀限月も勢いがつくだろうという思惑があって月末の相場は十月限が一代の新高値に買われた。

この日、前場一節、東京十月限をを土井商事が五百八枚買ったのが目立つ。

総体に市場は大衆筋の値ごろ売りが目につく。産地の天候も順調に推移しているし、一万五千円台といえば、ある程度の不作を織り込んだ相場である。

これで発芽時に降霜が無ければ、買うだけ買ったあとの支柱がはずされ、大量在庫、消費不振、順気作付け面積六万六千ヘクタールなどを材料に相場は反動安に転ずることであろう。

新ポ十一月限が仮りに七、八百円のサヤを買えば六千二、三百円地点。それは三月十日に付けた高値の水準である。

先限引き継ぎ線は、新穀限月のサヤで三月十日の高値に対し十割戻しとなるわけだ。

強気陣営は、米価高騰。世界的な穀物価格水準の上昇。異常天候。強力買い仕手の介入。インフレ。換物人気などを土台にして上値を考えている。

また、大衆筋の値ごろによる売りも、買い方にとっては狙う材料の一ツだ。

天候のほうは、当初予想されていた月末、月初めの降霜は避けられそうで、それだけに買い方も、やや急ごうという気になったものかもしれない。

それにしても大衆筋が、あまり売るようだと、この売り玉が狙われる場面がないとはいえない。

売り方にすれば嫌な思いをしなければならないかもしれないが、湧いたところ噴いたところ、人が踏むところや、熱狂したところは売り場になろう。

上値は、十一月限で六千三百円前後だと思う。

見ていて、この相場は、このままズンズン高くなるだけの器量はない。

相場は、かなりくたびれている。筆者はそう思う。だから売り方針である。

●編集部注
最後の玉はどうせ損をすると見て、上げ相場は最後の最後まで買う。

古参の相場師から伺った極意である。ヘンに揺らぐと曲がる。書いたり言ったりするのは簡単だが実行するのは難しい。

【昭和四八年五月三一日小豆十月大阪一万五五八〇円・五八〇円高/東京一万五六五〇円・六二〇円高】