昭和の風林史(昭和四八年六月二日掲載分)

大天井を構成 規制強化の懸念

いささか常軌を逸した買いっぷりの新ポ。残っていた売り玉も踏んで、先限を買った。

「ひかり出づ草ひとすぢや蛍籠 桜朶」

産地の低温に刺激されて六月新ポは、前日の買い方の煽(あお)りの余波を受け、新穀十一月は七千円代で生まれた。

第六ラウンドは、ピカピカの赤いパンツをはいた買い方が、まず強烈な一撃をあたえた。黒いパンツの売り方は、目から火が飛んだ。一瞬よろめいた。

北海道の一部では、みぞれ、あるいは雪が降る。

異常天候に異存はない。

にもかかわらず、あえて弱気する。ほかでもない相場に逆らっているのが売り方だ。百万人といえども我行かん。その意気たるや壮。

七千円相場は、まず凶作の値段である。二万円も相場であろうが、それは品物が不足し、現実に作柄が悪く、しかも売り方が煎(い)れて付ける値段である。

いや、インフレだし、換物時代だ。シカゴ大豆を見よ―というかもしれない。

よろしい。されば君買いたまえ。

七千円を買う以上は、腹を決めて二万円が目標となろう。六月の下旬に降霜の予報もある。それを頼りに思惑する。上野駅から九段まで、勝手知らないじれったさ、杖をたよりに一日がかりという歌の文句もある。

農林省当局は、買い大手の機関店に自粛を要望しているという。小豆の輸入ワク七月発券の動きもある。取引所は増証措置を早急に検討する動きだし、過当投機に対しての規制も強化されよう。

いまや物価対策は国民的世論であり、田中内閣の政治生命が賭けられている。〝物価操作まがい〟の相場操縦は、度が過ぎると社会批判の的となるだろう。もとより小豆の買占め、売りおしみに対しても断が下されよう。

相場的には、売り方の煎(い)れが、かなり出てしまった。新穀・旧穀のサヤ六、七百円が妥当のところ千円以上を買ったのは湧いた人気の人気料がはいっているとしても買いすぎだ。

確かに天候は不順であるが、その分も買ってしまえば、買い方の一人相撲になるだろう。

旧穀一万五千円でもどうかと思われたものを六千円に買ってしまったその反動は必ずこよう。日柄の面。取り組み内部要因。社会情勢を考えるところ。

●編集部注 
 異常相場の本性が出た。

 幾らロジックを積み上げようとも、実勢相場の動きには素直に従うのがある意味で相場師の矜持。

 迷わず踏めよ、踏めばわかるさ。損切りドテンは福の神、と呟きながら。

【昭和四八年六月一日小豆十一月限大阪一万六七八円/東京一万七〇三〇円】