昭和の風林史(昭和四八年六月十九日掲載分)

ゲーム終了す 茫茫模索の下げ

強く見えたところを撫でるように斬れ。力はいらぬ。無表情、静かに売る。どうと倒れてこよう。

「朝顔苗の双葉のどこか濡れゐたる 素十」

東穀の長期早受け渡し制度は考え方の大きな進歩である。七月二日より実施することになった。東穀の決断と実行は、他市場も敬意を表すべきだろう。

ヘッジ玉が場勘で攻められ、遂には踏まざるを得ない―という不合理を解消する方法で、先物市場が①実物の受け渡し②保険つなぎ③投機④サヤ取り―の場である以上、投機のみが暴れまわり、保険つなぎの機能が破壊されるということは取引所当局者としても考えざるを得ないであろう。

ところで問題の米国の穀物輸出規制であるがピービーンズもその対象品目に入っているかどうか。これは20日の細目発表を見なければ判らないが、落花生など対象外にあるだけに、ピービーンズも規制品目に入っていないだろうという見る向きが多い。

手亡の相場は、これは見ていると頭づかえが判然としてきた。強引に買い煽れば上値は付けられようが、品物が欲しくて買うのではないから、限界がある。売り方が踏んでくれば売り抜けようというだけのこと。これ以上ストップ高を続ければ規制は、さらに強化され、誰も手亡を相手にしなくなる。

小豆は天候に恵まれ大場所十勝地方も平年並みである。帯広の積算気温も順調で作付け七万三千ヘクタールが二千ヘクタール増えて七万五千の声を聞く。

これで先限が七千六百五十円(大阪)を割ってくると高値のかたまり玉がほどける地点、一万五千円割れまでは、ストレートであろう。気がつけば、誰もが、大きな錯覚をしていたということになろう。

手亡がまだ余熱を持っているから棒下げには抵抗もあろうが、その手亡でさえ、砂上の楼閣でしかない。いつ足元から音を立てて崩れるか判ったものではない。

ともかく、小豆は日柄の面でも限度一杯に来ている。46年の増山相場の末期にも似た姿である。

大廈(たいか=大きい家)のまさに顛(たお)れんとする、一木の支うる所にあらず―という言葉がある。

見えすいた買いあおりで値を吊るところは静かに売るのがよい。手亡もS高させるような場面は、軽く売る。撫でるようにスッと斬れ。

●編集部注
 星の対抗馬は、離島―。

 この年の六月、売り方買い方双方、罫線上のシンボルを拠り所にした。 買い方にとってのシンボルは、まだ出ていない。

【昭和四八年六月十八日小豆十一月限大阪一万六七九〇円・二一〇円安/東京一万六八五〇円・二一〇円安】