昭和の風林史(昭和四八年十月九日掲載分)

ナンセンスだ 人気が強いのは

人気は強いが、この小豆相場には深い下げが影の如くつき回っている。湧いたところは厳然売り。

「彼一語一語秋深みかも 虚子」

土曜休日による連休明けの月曜の相場は九月の出足からぶっ叩かれて、連休明けが怖いといわれていたが、月も替わって十月は逆襲高の小豆相場となった。

九月末消費地在庫七十一万七千俵。

本来なら端境期で、在庫量が最も軽くなる月だ。

七十万俵在庫にこれから新穀が出回って上乗せする。年内収穫高の二割出回りとしても、消費地在庫はすぐに百万俵大台に乗る。

いまのところ市場人気は仕手介入で非常に強い。誰も彼も押し目買いを言う。

輸入物が外貨ワクの関係で入らないこと。ホクレンがタナ上げしよう。来年の作付け面積は減少しよう。来年は凶作年だ。大衆の投機熱が小豆に集中する。輸送コストも上がっている。倉庫事情が悪い。新穀の契約が進んでいない。生産者は値段が気にいらないので売らない。強力な買い仕手が長期思惑に入った。世界的な穀物不足―等々。

しかし、相場が高ければ、なにもタナ上げする必要はないわけだし、品物が豊富なのに値段が高ければ買い占め、売りおしみ行為と非難される。

それより需要が伴うまい。多いものは安くして大量に消費してこそ経済の歯車が回る。

見ていると小豆市場はなにか勘違いしているように思えてならない。

去年は在庫が少なかった九月末消費地には道産小豆は五千俵しかなかった。

在庫が無いところへ豊作人気で売り込んだから、今年にかけてあれだけの相場が展開出来たのである。

今年は在庫七十一万俵。そこへ豊作小豆がのしかかる。相場には織り込み済みと言うけれど、なかなかどうして織り込んでなどいない。

九月は値が安かったから消費が伸びた。しかし末端需要家は、かなりのものを手当てしただろうから、十月は出荷が鈍るだろう。

人気ばかりが先走って需給の本筋を見失っているように思うのだが。

人気で買うだけ買ったあとの反落は、きっと凄いだろう。高くなれば産地の売り物が嵩むのは明々白々。そして需要が止まる。悪い嫌な相場が、もう少し咲きに行って展開されるだろう。

●編集部注
冷静な筆致である。

ただこの頃、日本には国際政治の熱波が到来。相場もこの熱にやられた。

【昭和四八年十月八日小豆三月限大阪一万三〇八〇円・一四〇円安/東京一万三一〇〇円・一九〇円安】