昭和の風林史(昭和四八年十月十三日掲載分)

趨勢下降線上 ジリ貧の相場だ

相場の趨勢はジリ貧である。戻り売りである。出回り期の下げ相場だ。高値買いつき玉がシコル。

「山雨に暮ゆく庭の楓かな 流木」

小豆の先限引き継ぎ線は千円棒を下に折り曲げた。上げ幅およそ三千三百円。その半値押しなら一万二千円のあたりが一応止まる地点と見られる。

三分の二押しなら一万一千五百円どころ。

ちょうとその辺りに飛んで明けた窓があるから、それを埋めるのかもしれない。

高値で人気を強くしすぎた。

だからこの相場は、安値にも売り込んだ跡が残っているし、上値にも買いついたシコリが出来ている。

中勢的には出回り最盛期にはいるため、十月中旬から十一月中旬にかけて豊作年に見られる一段安が展開されるだろう。

あまりにも相場を甘く見すぎたのではなかろうか。七十一万俵にのぼる消費地在庫をなめていると鉄槌で腰の骨をガンと横殴りされるだろう。

百九十三万俵の大豊作を人々はまったく無感覚で眺めているのではなかろうか。

現実、即ち供給の根本を見ようとしないで、砂上の楼閣を人々は夢見ているのである。

相場の人気とは面白いものでホクレンが60万俵もタナ上げしなければ価格の維持が出来ないほど、供給圧迫の小豆なのに、タナ上げを買い材料と信じ込んでしまった。

倉庫事情や輸送事情が悪くて産地との契約が進まない―というのも、一時的な材料でしかない。

収穫した小豆は本州内地に売るしか方法はないのだ。

筆者は、この小豆相場は時間をかけて下げるだろうと思う。

先限で一万一千五百円あたりが付くと思う。

もちろん押したり突いたりしながらである。

下げが急なら値ごろ観で買うだろう。時には強く見える反発もあるだろうが、趨勢はあくまで出回り期の下げ場面である。

従って高いところは着実に現物はヘッジされる。

先三本は一万三千円台を買われて重たい取り組みにしてしまった。

これから年末に向かって金融がどんどん締まってくる。手持ち現物の換金売りも出よう。また過剰流動性は吸収されて投機資金は窮屈になる。

相場はジリ貧を辿るだろう。戻り売りである。

●編集部注 
 昭和四八年十月十三日は、十月第二週目の週末土曜日にあたる。

 世界ではいろいろあったが、日本の世情はまだ穏やかであった。

 翌週、世情が激変する。

【昭和四八年十月十二日小豆三月限大阪一万二八九〇円・二三〇円安/東京一万二八二〇円・二七〇円安】