昭和の風林史(昭和四八年十月十五日掲載分)

暴落前の静寂 値ごろ買い旺盛

新穀の売り物が出てくると千円幅ぐらいバシッと崩れる相場だ。暴落含み。戻り場面好売り場。

「山寺の馳走に菊の酢あへかな 正秀」

今の小豆相場は逆張りである―と見る人。押し目買いである―と判断する人。戻り売りでよい―とする人三種三様、さまざまだ。

おしなべて高値に買い玉が破れ凧のようにひっかかっている人は強気を言う。引かされ玉に未練がからんでいるからだ。その逆で安値を売ったままの人は弱気を言う。

強弱は、すべて、わが建て玉より発生すると見ればよい。即ち人間誰しも身びいきになるものだ。

たまには買い建てていて弱気を言う人もいる。よほどの悪党か、それとも〝買いたい弱気〟根は強いのだが、安いところを買いたい―というわけだ。

その逆は〝売りたい強気〟本心は弱気なのだが、少しでも盛のよいところを売りたい。

逆張りという言葉は一番都合のよい言葉である。

千円動いても逆張り。三千円動いても逆張り。五千円動いても逆張り。

要は、その人の、投機の資金総量にかかわるわけでいうなら相場器量である。

いまの小豆相場をいかに判断すればよいだろう。

相場の味(あじ)は=重そうである。商いも、すぐ途切れる。力を入れて買っているあいだは強いが、すぐに垂れ込む。

実勢は=あきらかに供給過剰である。

人気面は=あなたまかせの強気である。桑名が本腰入れて買うだろうという頼りないものだ。でなければ来年は…と掴みどころのない遠い先の事をあてにする。

趨勢は=戻り一杯して二番底をつけに行くところだ。出盛り期の下げ過程にある。

取り組みは=高値掴みと安値売り込み。

出回りが遅れていることを強材料(買い)と受け取る人が多い。これは時間的要素によって硬軟どちらにでも判断出来るもので、結局はタナ上げしようと、倉庫がなかろうが出来たものは換金される運命にある。

インフレ。運賃値上げ。コスト高。生産者手取りのアップ等々。

それを織り込んでの今の値段ではなかろうか。大量在庫、大豊作にもかかわらず今の値が付いているのは他ならずインフレによるものだ。五年前なら四千三百円の相場である。

【昭和四八年十月十三日小豆三月限大阪一万二九六〇円・七〇円高/東京一万二八〇〇円・二〇円安】