昭和の風林史(昭和四八年十月十八日掲載分)

ともかくもだ 噴き値売ること

人々は、なぜ小豆相場を強気するのだろうか。その理由は充分判るのであるが、相場は上がらない。

「郵便局出て更に濃き秋の暮れ 誓子」

小豆相場が今ここで高くなれば、どういう結果をもたらすだろうか。

需要家が先高見越しで買い急ぐことも考えられる。

その場合、なにが原因で高いのか?が肝心である。一時的な人気によるものか、それとも定期市場の内部的要因によるものか。大衆人気による思惑買いか。

相場がある程度高くなると出盛り期だけに産地の売り物が急増しよう。

生産者は収穫したものを高値、高値で売ってくるのは明々白々。

なおも相場が、なにかの理由で高ければ、タナ上げの必要は無くなる。

豆の倉庫はどことも小豆で一杯である。それは消費地七十一万俵の古品と輸入物との在庫である。

端境期を知らなかった小豆といえる。

市場人気はなぜ強いのだろうか。とにかく強気が多い。

桑名の板崎氏の存在がその原因になっているのかもしれない。いわゆる提灯(ちょうちん)筋である。

タナ上げを期待している人も多い。タナ上げ決定で暴騰だ―と。しかしこの材料で買われたところは必ず利食い場になる。

来月新ポを期待している人も多い。ヒネの供用が出来ないから四月限はサヤを大きくつけて生まれる。それが二、三月限に影響して高いだろう―と。

あるいは来年の天候や来年の作付け面積の大幅減反を期待し、大思惑をする人が出現するかもしれないと待つ心。

手亡との比較観や新穀の産地契約が遅れている事。農家の手取り額を相場の基準にしている考え方。

年末需要。倉庫や輸送事情など。

それで上値を彼らはどのあたりに見ているのかといえば一万四千円~五千円である。そういう値段は今買っている玉が利食い出来るから、その年断が付いて欲しい。

ここで去年の事を思い出している人もあるだろう。が、去年は生産者が早い目に売ってしまったし桑名筋の買いも安い値段だった。また過剰流動性資金も豊富だったし、在庫そのものが少なかったのだ。そこへタナ上げが決まったから異常天候見越しでインフレの波に乗った。今年は違う。

●編集部註
オイルショック直前の空気はこのような感じ。

今のように情報の伝達速度が光の時代なら、このような分析にはならなかったのではないか。

【昭和四八年十月十七日小豆三月限大阪一万三四二〇円・一八〇円高/東京一万三四〇〇円・一九〇円高】