昭和の風林史(昭和四八年四月二十七日掲載分)

連休明け奔走 押し目積極買い

手をのばせば早や半値戻しの地点。小豆相場はぼんやりしているようで、なかなか芯がきつい。

「いと軽き石のおもしや桜漬 虚子」

国鉄の機能が完全にマヒして、日本列島は陸続きの孤島と化した。私鉄もバスも止まる。主幹道路は貨物自動車と乗用車で渋滞。

きょう、あすと、大都市中心に混乱がピークに達する。それにつけても、物資の輸送も全国的に停滞し、定期市場における現物の受け渡しにも影響が生じる。生鮮食品の価格もピーンと高騰する。

こういう状態が十日も続くと、日本は一体どういう状態になるか、考えただけでも寒けがする。それにつけても高層のマンションや公、営団の林立する高層団地の住宅など、水道が止まり、ガス、電気も止まれば、トイレの使用が出来ないし飲料水が得られず冷蔵庫の中のものは腐敗しだす。燃料もない。米も焚けない。

ましてテレビという情報源が停電で止まってしまえば、人心は不安と焦燥で騒然となるだろう。天災は、降って湧いたように出現するものだ。

きょう、あすの交通停滞は人災である。

われわれは、不慮の災害に対処するだけの準備を常にしておかなければならないと思う。

さて相場のほうは底意は堅いが、世情雑然としていて、もうひとつ身がはいっていない。

納会後の半場であるし、来週は連休、飛び休で商売にならない。

しかし阿波座筋は、ここのところ、ますます強くなっている。納会における土井、大石の大量受けも売り方にすれば無気味であろう。交易会のほうも値段が辛い。現物市場は定期にヘッジされていて、実需は定期市場から手当てしなければならぬ状態。

しかもケイ線筋は安値から(先限)千八百円も反騰した相場の力を改めて見直し、先限三千円必至、三千五百円もあり得ると意を強くしている。こうなれば安値を売った向きは、戻りを戻りとも言っておれない。

国鉄ストのため荷動きの面にも、いろいろな支障が出ているようだ。また厳しい規制も緩和される機運にある。証拠金も引き下げられれば商いは再び活況になるだろう。

なんとなく呆(ぼん)やりしているようで芯のきつい相場でなかろうか。日一日と天候不安もつのろう。

●編集部註
 この年の10月に襲う第一次オイルショック。はからずもそれを予見したかのような文章である。

 群集心理はトイレットペーパーの買い付け騒動を生み出した。小説「海賊とよばれた男」の見せ場となる時代だ。

【昭和四八年四月二六日小豆九月限大阪一万二六七〇円・一五〇円高/東京一万二四九〇円・一五〇円高】