昭和の風林史(昭和四八年四月十四日掲載分)

底値圏の鍛錬 弱気またふえる

小豆の期近限月は、いいところまで来ている。ものの値段という面を考えれは、悲観も出来ない。

「比叡も比良も晴れて山王祭かな 松月」

東京市場の空気も、すぐに立ち直りは出来ない小豆だがここからの深い下げは、天候相場を控えているだけに追いかけるのも感心しない。四月と五月には、相当量の渡し物がある。目先的には交易会の商談が関心事。まあこのあたりでの逆張りという動きで、相場がスッキリした姿になるのは五月中旬~下旬、遅ければ六月上旬―という見方であった。

総じて戻り売りの人気といえる。

注目されている今年度小豆の作付け面積は、産地筋の情報を総合すると『47年産小豆の作付けは六万四千ヘクタールであったが現在のところ十勝では馬鈴薯、ビートにとられ、やや減反傾向。中間地帯も大豆の増反でやや減少模様。しかし全道総合で見ると前年比10%程度の減反に終わるではないか』―。

山大商事では気象情報KKと提携して〝今年の天候と小豆収穫予想〟の印刷物を同社得意先および顧客向け

サービスとして配布した。それによると『北海道の今年の夏の気温は変動が激しく夏は短い。秋冷が例年より早い模様。小豆の成長には、あまりよくない天候が予想される。旭川地方は低温が出やすく晩霜と早霜に注意。帯広から北見地方にかけて六月から七月にかけ高温の日が多いが八月、九月は急に冷え込みが加わるので積算気温(五月21→九月27日)は二、一七六C度くらいで昨年の二、三〇一C度よりかなり少ない。小豆の反収は二・一七俵くらいで平年または、やや不作が予想される』―と。

山大商事の杉山社長は、この小豆相場および手亡相場に対して大層弱い見方をしている。いまの相場を強気するなんて、たわけか阿呆か大馬鹿で、風林なんか大馬鹿のたわけの見本であると厳しい。いや、相場なんてひと場転換の急所を逃がすと、目も当てられない事になり、まったく難しいもので筆者は、なにも好んで曲がっているわけではない。

大阪に帰って相場を見ると新安値に叩き込まれている。まだまだこの相場底練りが必要なのかもしれない。それにしても期近限月の一万円割れの値段は、ものの相場としては、いいところではなかろうか。

●編集部注
余談だが、この記事の2週間後に映画『仁義なき戦い/広島死闘篇』が全国公開される。

実際に作品を観た事ない人でも知っている、あのテーマ音楽を脳内再生しつつこの記事を読むと何故かしっくりとくる。

【昭和四八年四月十三日小豆九月限大阪一万一〇二〇円・五九〇円安/東京一万〇八二〇円・六七〇円安】