昭和の風林史(昭和四六年七月二十二日掲載分)

噴き値は売り 人気化の場面を

人気化して沸いたところは長期的に見て先限の売りが判りやすい方法と思う。

「朝凪や楼の下漕ぐ船の音 小魚」

産地は低温が続いているし、三カ月予報でも八月上、下旬に低温が予想されているけれど相場のほうは、もう一ツ反応のしかたが弱い。

作柄は今来週が山場で、いま不順な天候にやられると取り返しがつかないことになる。

相場の水準が、もっと低いところにあるとか、日柄が若いとか、証拠金がもっと低率で建て玉の制限などもなければ土用に入ってのこの低温はストップ高ものである。

需給面も一時に比べてかなり緩和されている。しかし一万六千円という水準は、やはり、かなりの不作を織り込んでいて、七千円を取りに行くには、余程の売り込みと、今以上の作柄悪が現実化しないことには、単に買い方だけの陽動では無理なように思う。

出来ることなら、ここで大きく値を下げて大きな売り込みをつくり、その弾みを利用した新値更新という相場にショックをあたえる方法が好ましいのである。

市場では十一月限の六千三百円の大きなダンゴを、どうやってほぐすか、この点に関心が集まっている。
このあたりには随分と買い玉がある。腹一杯買ってあの七月十日にかけての二千円崩しに直面しているだけに、買い方としても利が乗れば、ひとまず逃げたいところであろう。

さてこれからの方法であるが、天候が回復すれば、もとより反落は必至である。すでに相場は疲労している。
山大商事の杉山社長は『人気化して沸いたところは買い玉を降り、さらにきつい上げをするようならカラで売ってもよい』という考えのようだ。『しかし安いところは、やはり買っておくべき相場』と見ていた。

だいたい巧者筋は四千円と六千円のこの圏内での逆張りと見ている。

旧穀限月のほうは厳しい建て玉制限と増証で事実上は解け商いである。一般投機家は自然先二本しかできない。

筆者は噴いて人気化した場合は長期的に見ても十二月限の売りが判りやすいと見るもので、六千円乗せがただちに七千円相場につながるとは思わない。

●編集部注
相場が信念をつくり、信念が相場をつくる。
特に小豆のような「生産地相場」は今のNY金やシカゴコーンのように輸出入の問題や、これに絡んだ為替要因がない。従って過去の経験則が一つの指標となりうる。
そして、人間はなかなかその経験則を脱して、柔軟な行動が取り難い。
過去に自らが知りえた相場パターンとは異なる動きが出た時、人は相場とどう向き合うか。この時の小豆相場は、この先やってくる大嵐前の、不気味な静寂の中にある。

【昭和四六年七月二一日小豆十二月限大阪三〇〇円高/東京三六〇円高】