昭和の風林史(昭和四六年九月七日掲載分)

弱気通用せず なんと凄い相場

深押しありと見たが先に上値を取りに行く格好になった。あるいはもう一度踏み上げ場面あり。

「とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな 汀女」

前週の金曜日の相場では目先頭打ち、かなりの深い押し目攻勢を感じさせた。ケイ線も、半日足、節足、裏足、三日棒、日足ともに揃って暴落線をつけた。

だが、週末土曜日の引けかたは、相場を完全に変えてしまい、週明け月曜の相場は異常な強さを示して、たとえ目先狙いでも弱気しては駄目だということを判然とさせた。

クロウト筋も買い玉利食い後、前週月曜日の相場は売った。

あそこは相場定跡なら成り行き売りのところである。だが、定跡にない相場になっているから、その考え方は通用しない。

月曜の相場はそれを物語り証明した。

さてそうなると、一度軽くクッションを入れて人気を弱くしただけに、八千八百円から九千円を取りに行くのが先になるだろう。あれだけの踏み上げと出来高にもかかわらず、相場の基調は、なんら変化しなかった。

それというのも作柄の悪さが、あまりにも致命的で、なおこの先、早霜被害が予想されているだけに相場の内部要因よりも、外部要因による影響が大きいのである。

恐るべき小豆相場である。

見渡せば、八千円台乗せから新規買いは、そのいずれも薄氷を踏むがごときこわごわである。警戒心が非常に強い。

むしろ、古典派相場師は暴落近しという見方、考え方から抜けきれず、下げたら大きいという観念で、あくまでも勝負をしてくるだけに、相場の寿命も長く、しかも市場は極めて穏健で、末恐ろしささえ感じるのである。

もとより、下げもあるだろう。しかし、売り込むとすかさず目から火の出るような反撃が、抜く手も見せず放たれて、売り玉は取り残されてしまうのである。

北海道の天候は、いよいよ悪いし、病虫害の発生も大々的なものとなろう。また、材料として降霜、凍結、そして大雪山の降雪などというニュースは、先物市場を刺激せずにはおくまいし、再びストップ高という事態をまねくだろう。

売ってみたが、駄目な相場なら踏んで、買いにまわらなければなるまい。

売ってみて、この相場の強さと強さというものを痛感するのである。

●編集部注
相場地図の魔坂は、急勾配で知られている。

坂の形状を記録したものは多い。しかし、先人達が坂をどう歩いたかを記したものは少ない。

冷静にロジックを積み上げ、風林火山はこの時の様子を記録。これは今後、魔坂を歩く時、値千金の羅針盤となろう。

今から十数年前、パラジウム相場で未曾有の暴騰劇が発生。あの光景を思い起こさせるような展開が、まもなく始まる。

【昭和四六年九月六日小豆二月限大阪一七〇円安/東京六〇円安】