昭和の風林史(昭和四六年八月三十日掲載分)

高値を追わず 安場を仕込め!!

きつい下げかたをしても驚くには当たらない。相場の基本姿勢は、あくまで押し目買いである。

「蜩や豆腐に添へる紫蘇摘みに 梧逸」

八月もきょうと明日で終わる。二日新ポで始まったこの月は、ニクソン・ショックで株式も商品市場も、大きくゆれ動いた。特に仕手戦の、結末の凄かったゴム相場はケガ人続出、生糸相場も大衆筋は手ひどい打撃を受け、毛糸、砂糖の相場も、きつい場面であった。また穀物相場も結構大きく上下に動いた。

しかし、なんといっても株式の値下がりは、誰彼となく頭をかかえた。やけ酒を飲んでいる人が意外に多かった。担保力はアッという間に軽くなって影響するところも大きい。

そしてもう九月。憔悴している人の足もとを秋風が吹きぬけていく。

ところで小豆相場をどのように見るか。

現実面では、作柄が非常に悪く、従ってその分だけ相場の面でも買われたわけだが、収穫期までに降霜と凍結の不安がつきまとう。

また、昨年問題になった立ち枯れ病が、ある日突然表面化しないだろうかという不安も残る。

その限りでは新穀限月の押し目は、投機的にも買われるだろう。

相場内部要因面では買い大手であった山大商事の戦線後退が今後相場にどのような影響をもたらすか注目される。

売り方の踏み上げ、出来高増大、取り組み減少、大衆筋の高値にきての飛び付き買いなど見ていると、内部要因面で、押し目が構成されてもおかしくないわけだ。

そういうわけで、安ければ霜一発に照準を絞った買い玉がはいるだろうし、ここでそのまま上に持っていくには、煎れ一巡の後だけに起爆力に欠けるだろう。

ただ単に、値ごろ感や目先の地合いで、再び大衆筋が売り込んでくるか。あるいは逆に大衆筋が一様に強くなって買い思惑に片寄るか、九月新ポで登場する先物二月限に対する市場の動向が注目されるわけだ。

今後の基本方針としては、高値は追わず、噴き値は利食い。押し目、悪目買い下がりという平凡な方法が、判りやすいように思う。

●編集部注

 今回の文章でほんの少し、充用有価証券の話が出てくる。

 生産地相場である小豆相場がニクソンショックの影響を受けるとすればこの一点しかない。

 四〇年前がどうであったかは分からないが、通常は七掛け。株が下がれば充用価格は落ちる。

 充用評価が下がると、投資家は現物株よりも、商品先物の処理を優先する傾向がある。

 この年の日経平均株価の八月安値は二一六三円。

 この先、相場はこれ以上下がらない。充用評価も上がって行く事になる。

【昭和四六年八月二八日小豆一月限大阪六〇円安/東京八〇円安】