各商品が騒然 秋風が身にしむ
吹き荒れるニクソン・ショックの中で小豆相場は超然としている。無気味でもある。
「干草の山なす庭や稲光 夏山」
二日新ポはあれるというジンクスを地でゆく八月相場である。
ニクソン・ショックによって証券市場は大混乱のうちに暴落を続けている。
取引所の立ち会いストップも噂されるくらいである。
結論が出てないだけにどこまで下がるか業者も検討がつかない有様である。
「そりゃ聞こえませぬニクソンさん、お言葉無理とは思わねど…」と日本人なら誰しもグチの一つもでようというもの。
経済面では営々としてためたドルも、アメリカの意向に従ってノドから手の出るほど欲しかった金(きん)にも換えず辛抱し、繊維や鋼鉄の自主規制を行ない、政治面でも対中共問題、ベトナム戦には影の形に添うごとく行動を共にしてきて肝胆あいてらす仲と自他共に認めていたのに、この抜き打ちの処置は何事かといいたいところである。
さて、商品相場は今までも株式相場に比べると比較にならぬほど外部材料に対しては鈍感である。
今度でもニクソン・ショックが相場に現われてきたのは二日後の十八日からである。十八日にゴムと毛糸という国際商品がまずストップ安をつけ、十九日にはそれが粗糖、乾繭、スフ糸、生糸などに、しだいに広がりを見せている。
これは円の切り上げとその後の景気動向を見越した売り物がふえたものか、それとも証拠金に入っている代用証券の目減りで建て玉の処分を迫られたための投げかハッキリしないが、証券市場の大動揺がこちらの方に波及してきた感じがする。
ところで小豆相場はこのような動きと全く無縁である。とくにこのニ、三日の記録的な低温で作柄不安が再燃していること、買い大手が腰を据えて微動だもしないし、自由化、円切り上げといっても輸入相手は中共だけで影響が少ないというようなことがあって、あいかわらずコップの中の仕手戦が続きそうだ。
昨日は旭川で最低気温が六・七度にまでさがり三十九年ぶりの寒さであったとニュースは伝えている。
八月もまだ十日を残すのにこの冷え込みだ。作柄おくれと早霜一発の確率は甚だ高いと考えねばならない。
再び一万六千三百六十円に挑戦という場面もなきにしもあらずとも思われる。
●編集部註
本紙八月三〇日号で掲載したものから三日後の風林火山がこれである。
もう既に「ニクソンショック」という言葉が一般化しているようだ。
本来商品相場は、生産者市場と消費者市場の2つに分類する事が出来る。
前者が小豆相場、現在ならこれにコメが加わる。
現在、取引所に上場されている小豆、コメ以外の商品は全て後者、即ち消費者市場といって良い。
後者は、対象商品自体の価格だけでなく、為替や輸送運賃など、輸入に関係するコストの変動も価格形成に左右される。
これに比べて前者は変動要因が絞られる。極論だが、需給要因だけでも相場の大局を予測しやすい。故に記事では「無縁」と表現しているのだが…。
【昭和四六年八月十九日小豆一月限大阪一万五五三〇円(一五〇円高)/東京一万五五〇〇円(一九〇円高)】